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【妄想属性】パロディ 【作品名】涼宮ハルヒの詰合 【名前】God 【属性】神 【大きさ】0 【攻撃力】単一宇宙常時全能。 【防御力】単一宇宙常時全能。 【素早さ】あらゆる意味での全時間で絶対に先手を取れる奴よりいくらでも早く先手を取れる。 むしろ先手・後手などという考え方自体がGodにとってはあらゆる意味で無意味なほど早い。 そして行動はそのまま相手に何もさせずにあらゆる意味でいくらでも動けるほど速い。 当然だがこれは考察外・対戦外・現実時間やそれ以上・それ以外さえも含めてのことである。 【特殊能力】God knows: Godはあらゆる意味での全知よりいくらでも上の超全知なので、 自分が勝てない相手にも絶対勝てる方法とそれを絶対に邪魔されずに実行できる方法を知っている。 当然だがこの能力が絶対に無効化されない方法や能力では勝てない奴に勝つ方法も知っているし God knowsで対処できないいかなる敵・攻撃・状況も絶対に対処できる方法と それを絶対に実行できる方法も知っている。 もちろん、これらの方法は全て自分が絶対に実行可能な方法である。 これによりあらゆる意味での全知全能よりはるかに強い奴と戦って無傷かつ相手を一撃で倒して勝利した。 【長所】【短所】全知にも程がある。 988 名前:格無しさん 投稿日:2006/10/21(土) 12 46 04 God: 現最上位並の素早さを持ち、一手で必ず勝つとすると、 一手目で最強になる必要がある全階層全宇宙全次元全知全能完全超越最強船団より下には勝てる。 微妙だが、作者=God~現最上層位=Godのいずれかになると思われる。 24 : ◆rrvPPkQ0sA :2016/10/05(水) 22 16 11.37 ID QjacyY/N 総当たり考察戦
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コスチューム 概要 オプションの選択 販売中のコスチューム コスチューム[原作](2016/6/29~) 過去に販売されたコスチューム 冬の祝祭コスチューム部位[祝祭の仮装](2016/12/14~12/28) ハロウィンコスチューム[祝祭の仮装](2016/10/26~11/16) イースコラボコスチューム[イースの衣装](2016/8/31~10/05) コメントフォーム 概要 [部分編集] キャラクターの見た目を変えることができる装備品。奇跡の店から大金貨(課金アイテム)を使って購入する。 同じコスチュームのメイン、頭、胴、腕、足の5種類を揃えることで見た目の変更が可能になる。またメインだけ変更や、それ以外4箇所のみでも可能。 オプションの選択 [部分編集] オプション一覧 部位 オプション メイン ダメージ+100%(ゴールドモンスター) 頭 筋力+1 知力+1 幸運+1 胴 最大LP+200 最大MP+100 魔法防御力+50 腕 攻撃速度+15% 詠唱速度+15% 最終ダメージ(グロッキー)+50% 足 回避率+10% クリティカル耐性+10% 被ダメージ(物理)-5 舞台版オプション一覧 部位 オプション メイン 生命力+2 精神+2 判断力+4 頭 命中率+15% 全スキルクールタイム-15% リアクションスキル「チェイン」の発動率×120% 胴 被ダメージ(物理)-10% 被ダメージ(魔法)-10% クリティカルダメージ+40% 腕 物理攻撃力+15% 魔法攻撃力+15% クリティカル率+25% 足 基本最大LP+20% MP自然回復量+2.5 幸運+1 ページトップへ 販売中のコスチューム ページトップへ コスチューム[原作](2016/6/29~) ※5部位セット販売は8/24まで [部分編集] 原作コスチューム一覧 アイテム 装備可能職 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (パーンの鎧.png) パーンの鎧 エスカイア系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (エトの神官服.png) エトの神官服 オラクル系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (スレインのローブ.png) スレインのローブ マジックユーザー系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ウッドの革鎧.png) ウッドの革鎧 ローグ系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ディードリットの短衣.png) ディードリットの短衣 シャーマン系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ギムの鎖帷子.png) ギムの鎖帷子 ウォリアー系 ページトップへ 過去に販売されたコスチューム 冬の祝祭コスチューム部位[祝祭の仮装](2016/12/14~12/28) [部分編集] 冬の祝祭コスチューム一覧 アイテム 装備可能職 祝祭の仮装[エスカイア] エスカイア系 祝祭の仮装[オラクル] オラクル系 祝祭の仮装[マジックユーザー] マジックユーザー系 祝祭の仮装[ローグ] ローグ系 祝祭の仮装[シャーマン] シャーマン系 ハロウィンコスチューム[祝祭の仮装](2016/10/26~11/16) [部分編集] ハロウィンコスチューム一覧 アイテム 装備可能職 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (祝祭の仮装[エスカイア].png) 祝祭の仮装[エスカイア] エスカイア系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (祝祭の仮装[オラクル].png) 祝祭の仮装[オラクル] オラクル系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (祝祭の仮装[マジックユーザー].png) 祝祭の仮装[マジックユーザー] マジックユーザー系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (祝祭の仮装[ローグ].png) 祝祭の仮装[ローグ] ローグ系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (祝祭の仮装[シャーマン].png) 祝祭の仮装[シャーマン] シャーマン系 イースコラボコスチューム[イースの衣装](2016/8/31~10/05) [部分編集] イースコラボコスチューム一覧 アイテム 装備可能職 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (アドルの鎧.png) アドルの鎧 エスカイア系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (フィーナの服.png) フィーナの服 オラクル系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ダルク=ファクトのローブ.png) ダルク=ファクトのローブ マジックユーザー系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (リリアの服.png) リリアの服 ローグ系 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (レアの服.png) レアの服 シャーマン系 ページトップへ コメントフォーム 最新の20件を表示しています。コメント/アイテム/コスチューム? ページトップへ
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序章『聖者の行進』 聞こえる彼等彼女等の歌 聖なる歌の朗じは響いて その歩みは終わりの先へと続く ● 夜となり、闇となった空はその上下に数え切れない光の群を抱いている。 上部の光達は星、下部の光達は街灯りと人は呼ぶ。 そして街灯りの中央には巨大な白の建造物がある。無数の階層を内蔵した駅ビル、海鳴駅の看板を担う建物だ。 外壁に備えられた大きなデジタル時計が示すのは21時、営業こそ終えているが終電には遠い時間だ。しかし人の姿はどこにも無い。否、それ所かホームに控える電車、駅前のロータリーに停まるバス、その何れもが動いていない。 全くの無人は駅ビルを静寂で包む。しかし、そんな中に一つの音が生まれた。 駅ビルの窓の一つ、それが屋内側から叩かれたのだ。 窓に映るのは女性の人影。人影は幾度か窓を叩き、しかしすぐに走り去った。 引き換えに窓が一面黒くなり、次の瞬間には砕かれた。 破片を屋外へとばらまいたのは、巨体だった。 2メートルは超えようかという巨体。その姿は屋外故に陰って隠されたが、窓を砕いたその腕は見て取れる。腕を覆った灰色の剛毛と、弧を描いた長くて太い爪だ。 そして影が走り去る。その方向は、最初に窓を叩いた女性が走り去った方だ。 ● 誰一人としていない駅ビルの中、一つの人影があった。 大きな楽器ケースを持ち、髪とブレザーを振り乱して走る少女だ。 少女は疾走し、黄色で3階と書かれた表記を横切った。 「・・・2階には、隣のビルへ続く橋がある・・・っ」 息を切らした喉が、呟きによって咳き込んだ。 しかし少女は止まるわけにはいかない。何故なら、未だに何かが自分を追う気配があるからだ。 何なの? ・・・一体何だって言うの!? これはツケだろうか、と少女は思う。三年間、ずっとここを隠れ家にしていじけ続けた自分への。終業を過ぎても帰らなかった自分への。 「帰ろうと思ったら誰も居なくて・・・、警備員のおじさんも・・・駅員のお兄さんも・・・!」 そして出会ったのが、今自分を追う巨躯の影だ。 逃げなければ、と思う。あの影に捕まれば、自分が得るものは破滅だけだ。 眼前、エスカレータが見えた。といっても動きを止めたエスカレータは通常の階段と同意だ。少女は駆け下りていく。目指す2階はもうすぐだ。 そこまで来て、少女は頬に一つの感覚を得た。 「・・・風?」 そよ風と言っても良い、普段ならば快感とも言えるものだ。しかし緊張感で満ちた今の少女にとって、それは危機を知らせる一報だ。 「っ!?」 背に振動を得た。 追い付かれたか、と思ったが、背全体を痺れさせるその感覚はそういったものではない。やがてそれが耳に届くものだと気付いた。 それは、雄叫びだったのだ。肉が痺れ、骨が震え、心が竦むような、獣としての叫び。 「ーー化物っ!」 もはや少女は認めた。非現実的だとして度外視した影の正体を。人を遥かに超える巨体と爪、そして獣声を持つ異形なのだと。 そして、雄叫びが迫った。見えはしない。ただ、巨躯が自分へと躍りかかるのを気配で感じた。 影が迫る中、少女は思った。ごめん、と。だがそれは、ここにいない父へでも母へでも、仲の良い友達や恋する学校の先輩へでもない。 手に持った楽器ケース、そしてその内容物への謝罪だ。 動きは後方へのスイング。ケースを重量任せに振るう一撃だ。 重量と振り子動作による加速、その双方を得た楽器ケースは巨大なハンマーとなって迫る影を打つ。 「ーーーっ!!」 影が抗議に鳴き、楽器ケースの一撃に吹っ飛ばされた。 巨躯はエスカレータのサイドフレームを突き破り、そしてその向こうの吹き抜け空間へと飛び出す。 雄叫びが地下階層まで遠ざかっていくのを、少女はエスカレータを転げ落ちながら聞いた。 階段を駆け下りる途中に背後への重量任せな一撃、それで態勢を維持出来る筈がなかったのだ。 「ーーぐっ!」 どうにか頭を守り、2階の踊り場へと衝突する。 痛みは肩と脇、それに腕が中心となって滲む。足への被害も甚大、転げ落ちる際に段差の角で打ったようだ。 怒られちゃうな・・・ 腕に感じた痛み、それに少女は涙を得る。腕だけは守れ、そう聞かされて育った自分の過去が軋んでいる。 だが、と思う。早く行かなければ、とも。 「・・・橋へ・・・っ」 痛む身を引きずり、少女は歩く。腕を抱え、眉をしかめ、足を引きずり、遅々としながらも歩く。そうしてどうにか辿り着いた連絡橋へ続く出入り口。 それを少女は抜け、再び有り得ないものを見た。それも今度は二つだ。 「猫と、ロボット・・・?」 ● 橋へ繋がる踊り場、そこに出た少女の前には確かにそれがあった。 橋の中程にうずくまる子猫と、それを覗き込む様に立っている巨大な人型機械だ。 銀色に近い鉄の装甲は弧を描いた先鋭形、手足は細長く、単眼の頭部を持つそのフォルムは人型だ。ただし駅ビルの1階に相当する地上部に足を置いて、目線は2階から伸びた橋を見下ろす巨大さだ。 「あ・・・」 その単眼がこちらへと向く。 「・・・や」 足がすくみ、少女はへたり込んだ。 「・・・や、ぁ・・・っ!」 心身が震えて何も出来なくなる。 来ないで・・・っ! もう何も来ないで・・・っ!! もう嫌だ、そんな思いに思考が沈み、 「ーーえ?」 不意の感触にそれが止まった。冷たさと湿気のあるざらついた感覚、それを膝に感じた。 何? なんだろうか、これ以上何が来たというのか。 逆上に近い意思に突き動かされ、少女は感覚を与えた何かがいるだろう膝元を見た。 そこにいたのは、 「・・・猫」 橋の中程でうずくまっていた子猫。それが少女の膝を舐めていた。 いつの間に、という疑問が浮かび、 「・・・さっきロボットがこっちを見たのは、この子が私に寄って来たからで・・・」 子猫が舐めているのは、先ほどエスカレータを転げ落ちた際に得た傷だ。 まるでその傷が早く直ってくれと、そう言うかの様に。 私は・・・もう何も来ないでと、そう思ったのに・・・ この子猫は来た。如何なるものの来訪も拒んだ自分を、助け励ますかのように。 そして猫は面を上げ、少女の顔を見た。 「・・・に」 鳴き声は細く、高く、愛らしいもので。それは幼さと弱さと純粋さを秘めていて。 「・・・っ!」 連れていくと、一緒に助かろうと、少女に決意させた。 少女は子猫を抱き、立ち上がる。足首が、肩が、全身が痛みを訴える。 でも、大丈夫・・・っ! いける、と。 もう泣かない、と。 この支えを得られた自分は、 「・・・もう、負けないっ!」 ロボットの腕が振り上げられたのと共に、少女の立つ踊り場が砕けた。 ● 瓦礫と共に巻き上げられ、少女は浮遊感を得た。 最早痛みは感じない。 ただ漫然と、虚空に浮かぶ事を知覚して。 不意に見えた星空が綺麗だと思って。 「あぁ・・・」 悲哀もなく、感激もなく、ただ感慨を持って声を漏らす。 胸に動作を感じて視線を向ければ、抱えていた子猫があくびを一つ。 緊張感のない子、という感想を抱き、それが支えになったのだな、とも思う。 そして体が上昇を止め、次第に落下を始め、 「ーーもう、大丈夫だよ」 声を聞いた。 誰の? 自分の声ではない。では猫の声か、等と考えて笑った。 今晩だけで、非現実のオンパレードだったものね・・・ 脳まで非現実に侵されたか、と考えながら、 「佐山君、こちら高町。乱入者を確認・・・確保したよ」 「ああ、見ていたよ、高町君」 抱きとめられた感覚に少女は意識を手放した。 ● 「・・・さて」 上空、瓦礫と共に巻き上がった少女が保護されるのを佐山は見た。 身を包む白服と足首から伸びた桜色の光翼は、少女の保護者を夜空に栄えさせる。 その光景に佐山は頷き、 「良い仕事をするね、高町君。・・・自分で撃ち上げた少女を自分で確保、ナイス自作自演だ」 『そ、それは聞き捨てなら無いかなー!?』 意識に響く声、念話を持って高町が抗議した。 『あそこで私が先に踊り場を撃ち抜いてなかったら、この子絶対に死んでたよ!?』 そう、佐山は見ていた。ロボットの腕が少女のいる踊り場を砕くより先に、高町が砲撃が打ち込んで少女を吹き飛ばし、致死の場所からずらしたのを。 もしなのはがそうしなかったら、少女はロボットの腕に引き裂かれていただろう。 「だから褒めているのではないかね。さすが高町なのは、時空管理局の白い悪魔だ」 『あ、それ禁句!! そこに降りたら痛い目見せるからね!?』 「・・・やはり悪魔ではないかね。それよりも、君より先に彼によって私は痛い目を見そうなのだが」 眼前、巨躯のロボットが動いた。 その質量に反比例した俊敏な動作は即座に腕を構え、今度は佐山に向けて腕を振った。 「佐山君ッ!?」 念話ではない、なのはの直な声が聞こえた。 少女を抱えたまま、なのはがこちらに向かってくる。 「何、問題はない。ーー私には、麗しの根性砲撃が控えている」 飛来するなのはに佐山は笑みを持って答える。 そして眼前に腕が迫り、 「我、力を求める事を恐れ・・・」 不意に、佐山の後ろから声が届き、 「ーーしかし、力を使う事を恐れぬ者なり・・・・・・ッ!!」 佐山の背後から閃光が走る。 光速を体現したそれは一直線にロボットへ向かい、その胸部装甲を突き砕いた。 『・・・・ッ』 その勢いにロボットは僅かに身を浮かし、噴煙と轟音を上げて倒れた。 そして佐山の後ろから人影が現れる。現れた人影に、佐山は振り向かない。 「こちら新庄。現在ガジェットドローンⅣ型と抗戦」 やがて人影は佐山の前に出た。 「ーー撃破を完了」 それは一人の女性だった。 黒の長髪を揺らし、白いロングスカートの装甲服を着込んだ少女。その手には長大な機械の杖が握られている。 「嗚呼、新庄君。君の仕事はいつも麗しい」 「そりゃどうも。僕もいつも言ってるよね? あんまり一人で前に出ないで、って」 「これは異な事を新庄君。君を除く愚民共を率いてやる偉大な私が最前に立たずしてどうするのかね?」 「君を最前に立たせたら皆が同類に見られちゃうだろ!?」 「ていうか私は愚民・・・?」 佐山を半目に見ながらなのはが降り立つ。なのはに抱えられた少女を新庄は覗き込み、 「この子が乱入者? 無事かな?」 「うん。・・・逃げる途中で幾らか怪我はしたみたいだけど、大事にはならないよ」 「ああ、それにこの子は最後で再び立ち上がる事が出来た」 少女の胸に居座る子猫は動かない。こちらを見据えるその姿はまるで護衛役だな、と佐山は思い、 「君達も頑張ってくれたまえ?」 砂を蹴るような音がして、無数の影が佐山達を取り囲んだ。 何れもシルエットこそ人型だが、巨躯に剛毛と爪を備えた異形ばかりだ。 「・・・人狼が十。この子を追い掛けていたと同種だね」 佐山は取り囲んだ影、人狼達を見渡す。 「敵の重役が前線で孤立したからって、やる気になってまぁ・・・」 新庄は手に持つ杖を構えた。 「・・・このLow-Gに揃った答えに背く分からず屋は」 なのはは抱えていた少女を下ろし、拳を突き出した。 指が開かれ、その中にあるのは指先程の小さな赤い宝玉。 「ーー頭、冷やそっか?」 瞬間、宝玉より烈波が放たれて人狼達を踊り場から地上部へと突き落とした。 それを見下ろすなのはの手にある物は最早宝玉ではない。手の平程に巨大化した赤い宝玉を先端に備える、金の柄をした機械の杖だ。 「レイジングハート・エクセリオン。ーー神威と世界樹の後継者、高町なのはが相手になるよ」 起き上がる人狼達に、なのはもまた地上部へと飛び降りた。 ● 遠く、戦の音がする。 佐山は音源たる無数の戦場を見た。 眼下では、桜色の光を率いて高町なのはが人狼達と戦っている。 眼前では、槍持つ少年が少女と共に白の翼竜に乗って空を翔ている。 遠くでは、黒の巨大な人影が同じく巨大な人影と格闘戦を展開している。 そして、不意に旋律が生まれた。 隣に立つ新庄、彼女が一つの歌を紡いでいるのだ。 佐山はその歌を知っている。聖者の誕生を讃える歌、清しこの夜の一節だ。 Silent night Holy night/静かな夜よ 清し夜よ Sheperds first see the sight/牧人たる者が初めにこの光景を目にする Told by angelie Alleluja,/それは天使の歌声 礼賛によって語られる Sounding everywhere,both near and far/近く 遠く どこまでも響く声で “Christ the Savior is here”/「救い手たる神の子はここに在られる」 “Christ the Savior is here”/「救い手たる神の子はここに在られるーーー」 歌を聴きつつ、佐山は首元のフォンマイクを取って口を開いた。 「ーーー諸君!」 佐山は右腕を振り、眼前に広がる戦場を見た。 「今こそ言おう。 ーー佐山の姓は悪役を任ずると!」 新庄が笑み、佐山も笑みをもって返す。 「私は今ここに命ずる! ・・・誰も彼も失われるな、と! 何せ世界は有限、誰かが欠ければその分だけ世界は寂しくなってしまうのだから!!」 遠く、轟音が響く。仲間達が相対する敵を負かした音が。 「解るな!? ならば進撃せよ! 進撃せよ! 進撃せよ、だ!! 馬鹿共が馬鹿をする前に殴りつけて言い聞かせろ! ・・・我々の方が断然馬鹿を楽しんでいるぞ、と!!」 佐山の声が響く。 「ーーそれが解ったら言うが良い!!」 「テスタメント!」 答えが返された。 幾十の言葉が、聖書に語られる契約の言葉を持って。 ようし、と佐山が頷いて笑った。酷く楽しそうな、獰猛なまでの喜色で笑む。 「さあ・・・理解し合おうではないか!!」 ● ーーーー話は2年前、2005年の春にまで戻る。 目次へ 次へ
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思い起こせば、あの火事がきっかけだったんやなあ。 機動六課のはじまり。 うちが望んだ新部隊の。 初動の遅さが犠牲者を増やす。 ロストロギアならなおさらやんか。 だからこその精鋭部隊や。 少しでも早く、一人でも多く。 あれは、そんな気持ちの生んだ焦りだったんだと思う。 「誰にも、人をもの呼ばわりする権利はない」 覚悟君が目覚める前の、うちと、零(ぜろ)の出会いや。 魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果 第二話 『盟約宣誓』 我ら、零(ぜろ)の意志なり。 零(ぜろ)に宿りし三千の怨霊なり。 誰と問われたとて、三千の怨霊たる我ら以外にあらず。 国籍も、、信念も、愛するものも異なっていた我らを結びつけるものは ひとえに、侵略戦争への怨嗟なり! 人の尊厳をふみにじる悪鬼どもへの限りなき憤怒なり! ゆえに我らはひとつ。 零(ぜろ)となりて外道を討つ。 我らと同じ血涙をためらいなく流した、我らが戦士、葉隠覚悟と共に。 憎しみの海たゆたう我らを光と変えたあの覚悟が、背中まかすべき相手を見誤るとは思わぬ。 邪(よこしま)なる企みがため利用されることなど、ありえぬ。 だが我ら、ただの鎧なり! 昏睡に陥りし覚悟を前に、首を切り離されていては何もできぬ。 そして、覚悟に必要なものは刹那を争う外科手術! もとより我らの手には負えぬ! ゆえに覚悟の着装せし首以外の我らは分離、治療行為を異邦人に託さざるを得ず。 同時に我ら、彼らに拾われ、現在カプセル内にて薬品付けなり。 当然であろう、零(ぜろ)は兵器! 誰が見ても明らかなり! 力求める輩に我らを為す技術、いかほどの魅力あろうか! 強化外骨格が瞬殺無音、誰にも渡すわけにはいかぬ。 だが我ら、ただの鎧なり! 現在可能なのはただひとつ。 ふさわしきもの以外の着装、これただちに我らが生贄(にえ)。 邪悪な認識をもって我らに接するものなど、とり殺してくれよう。 「…お、重かった」 「そのまんま人の首の重さだな、こりゃ」 「持ったことあるのかよ」 「ないけど」 ズン!…やって。 ヘルメットが重そうな音を立ててテーブルをきしませてる。 額の星と『七生』の文字が黒光りしてるのも、重さに拍車をかけとるな。 ここまで持ってきてくれたデバイス管理チームの二人には感謝やで。 火事の現場で拾ってきたフェイトちゃんも、片腕に女の子抱えて、 もう片手でこれの重さに耐えるのは閉口モノだったみたいやし。 「おおきに。 それじゃあ、引き続きお願いな」 「了解です」 敬礼して戻っていく二人を見送って、室内に目配せ。 ここにいるのは、なのはちゃんとフェイトちゃん。 それと、事情を話して急きょ来てもらったクロノ君。 「これが…あの少年の身につけていたデバイスの、頭か?」 「みたいやね。 せやろ? なのはちゃん」 「うん、頭だけかぶってなかったけど…これならそろいのデザインだよ。 でもフェイトちゃん、火事の中でよく見つけたね」 「目がね…ほら、ここだけど、目が光ってたんだ。 それに、なんだか…血の涙が出てて、可哀想で」 「フェイトちゃんらしーわぁ」 ヘルメットの目の部分を指さして、うつむき加減に話すフェイトちゃん。 デバイスにだって、うれしいこと、イヤなことはあるもんなあ。 この子はそういうのに人一倍敏感やから、本当に助けたい思うたんやね。 おかげで助かったんや、感謝せなあかんで? まだ名も知らないデバイスやけど、そないなこと言ってやりとうなったわ。 「…で、問題は、これがどういうシロモノかということなんだが」 せっかちにクロノくんが切り出す。 忙しいところ無理言って来てもろたんやから、当たり前やけど。 「あの少年、ミッドチルダに戸籍を持っていない。 該当データなしだ。 レリックが原因で起こった火災の中にいて、おまけに未知のデバイス。 穏やかじゃなさすぎると思わないか?」 「関連は、あると思うた方が自然やね。 時空遭難者なんかな…」 「葉隠覚悟、っていう名前は、わたし達の世界の、日本の名前だよね」 「ともかく、僕に一番最初に話を持ってきてくれたことはいい判断だ、できる限りのことはする」 覚悟君のデバイスがロストロギアみたいなものかもしれないってことで、 クロノ君にも「偶然ここに居合わせて」もらったのが助かったわ。 現に、正体不明人物が火事の現場に現れたことの連絡が伝わって、 その対策として居合わせたクロノ君にまかせるってことが決まったのは…翌日なんやで? 動きがのろすぎるんや! もしこのせいでまた空港が火事になったりしたら、どうするつもりやねん。 だから今は、クロノ君の声のかかったチームで、デバイスの解析作業を進めてる。 さっき、サンプルの頭と一緒に、解析の途中経過も持ってきてもらった。 「…これは、一種の人造生物だな。 人間の身体にからみついて外骨格そのものになるのか」 「そういえば覚悟君、言ってたっけ。 強化外骨格、って」 「だが、デバイスでいうところの制御中枢にあたる部位が、これには存在しないじゃないか。 聞けば、手術ができず難儀しているところに、あの鎧は勝手に脱げていったらしいが」 「違うよ」 フェイトちゃんが、また、あのヘルメットを腕に抱えた。 「デバイスとか、制御中枢とか、そんなんじゃなくて… それでも、この子には意志があるよ。 よく、わからないけど」 「理屈じゃない、か…それも一理ありそうなのがまったく困る」 「まあ、あとは調査の結果待ちやね」 わからないことはこれ以上話せへんし。 今回決めるべきことは、ひとつや。 「じゃあ、本題に入るけど…結論から言うで」 「大体、検討はつく気がするが、言ってみてくれ」 「うち、これからもっと偉くなってな、新部隊を創設したいと思うねん。 今の管理局は初動が遅すぎるわ。 ロストロギア関係の事件が起きれば、犠牲者が増えすぎる。 エキスパートを集めた即応部隊が必要なんや」 「おおむね賛成だ、生半な道じゃないが…それで?」 この話と、なんの関係があるのか? クロノ君はそう言っとるんやけど、大アリや。 「葉隠覚悟君が、ぜひとも欲しいんよ」 「なっ…」 度肝を抜かれた顔せんでもええやん。 そんくらいのこと、予測しといてほしかったわあ。 「まだ身元すらはっきりしていないんだぞ?」 「はっきりしてからでも遅くはあらへん。 どうせ早くて三年かかるわ、この野望!」 「それにだ、本人の意志も確認せずにそれはないだろう、常識的に…」 「わかっとるて、全部、覚悟君次第やて。 話に聞くだけの力を持ってるなら、それだけの意味がどこかにあると思う。 そのためにも、覚悟君の自由、誰にも奪わせたらあかんねん」 「…それを、ぼくにどうにかしろというんだな」 「悪いこともしてないのに目を覚ましたらデバイスが没収されてるなんて、嫌やんか。 せやから、せめて目を覚ますまでの間は現状を維持して欲しいんや」 「やれやれだ…これはひとつ、貸しだぞ」 「そのうちな、無理言ってもええで」 まだ直接話したことすらない子の未来を好き勝手するつもりは毛頭あらへん。 せやけど、聞けば聞くほど惚れるやんか。 空港火災の中、死にそうな身体を引きずって女の子を助け、残った子を助けにまた舞い戻ろうとする。 シャマルが言うには、生きてる方がおかしいダメージを受けてるちう話やった。 うち、そんな子となら一緒に働きたいねん。 なのはちゃんや、フェイトちゃんと一緒に。 「戦力として、ものにしたいところやな…覚悟君も、この子も」 なんとなく、ヘルメットをつかんでみたそのときやった。 ヘルメットの顔が開いて、中の肉が触手になって飛び出してきて、 うちの頭に、顔にべたべたひっついて…何が起きたのかわからへんかった。 だけど、そのとき一緒に聞こえてきた声だけは、はっきりわかった。 『零(ぜろ)にふさわしき戦士かを問う!』 八神はやて、零(ぜろ)の頭部、着装! 戦力として、「もの」にしたいところやな。 「もの」にしたいところやな…「もの」にしたい…「もの」に… 「もの」、「もの」、「もの」、「もの」、 「もの」! 「もの」! 「もの」! 「もの」! 「覚悟はきさまのものにあらず! 誰にも人をもの呼ばわりする権利はない!」 我らと覚悟の力を欲するという少女は、我らが前で最大の禁句を口にした。 「戦力」として「もの」にするだと? よかろう、ならば覚悟を問うてやる。 強化外骨格の力を得ようとするならば当然の試練なり! 我らが意識界に取り込まれし少女は生まれたままの姿。 ここでは何ごとも隠し立てはできぬなり。 少女は尋ねる。 早くも我らに気づいたか。 我らが無数の髑髏(しゃれこうべ)に。 「これ…違う、あなたたちは?」 「我ら、零(ぜろ)に宿りし三千の怨霊なり」 「なら、あなたたちが、あの子…」 「我らが力、欲しいと言ったな! 精鋭を集めた部隊に欲しいと!」 このくだり、忘れたくとも忘れるまいぞ。 鬼畜、葉隠四郎も同じことを言っていた! 零式防衛術は、そこより生まれ出でたのだ。 無数の屍を踏み台として! この少女、八神はやてとやらの正義、確かめねばならぬ。 そこに邪悪な認識欠片(かけら)もあらば、ふさわしからざるものにふさわしき処遇を与えん。 覚悟未だ目覚めず、我らの五体不満足なる現状、こうするより他、理想的なる道は無し! 「ならば見よ、我らが憎しみを!」 零(ぜろ)が生まれたのは、第二次世界大戦下。 まだ日本が帝国を名乗っていた時代。 本土決戦に備えるべく葉隠瞬殺無音部隊にて生み出されしは 人体の潜在能力を極限まで引き出し一触必殺を可能とする零式防衛術! 体内にうずめることで五体を装甲化、弾丸をはじき返す零式鉄球! 生体改造により人間そのものの戦闘能力を強化された、戦術鬼! そして、武器を内蔵した耐熱防弾防毒鎧、着装すれば人間を戦略兵器と化し単身にて一国をも落とす、強化外骨格。 これらの完成のため、無数の人体実験が必要とされ…提供されしは敵国人捕虜! 彼らは性別、人格、年齢、なにひとつ考慮されず番号として扱われ、無惨な死を遂げていった。 頭や四肢を破壊されては、ごみのように捨てられていった。 彼らの血肉より出でしが、強化外骨格試作壱号、零(ぜろ)。 零(ぜろ)の涙は彼らの血涙。 憎むべきは侵略戦争、憎むべきは人の皮をかぶりし鬼畜。 恨みと痛み、絶えることなし… 八神はやては、歴史を見た。 「うあああああああああああああああああああ!!」 絶叫。 我らが我らたる所以を見たか。 痛みから来るものか、恐怖から来るものか。 八神はやてはその場から遁走を開始した。 「やはり、ふさわしき戦士にあらず!」 ならば殺すべし。 頭蓋を圧壊せしめて殺害するなり。 そしてこの意識界、我らから逃れうると思ったか! だがしかし! 目の前に立ち塞がりしは、剣十字! 「きさま…ここに侵入してくるとは、何者か!」 その中より浮かび上がるは、白き女。 今にも消えゆきそうな幽鬼なり。 憎しみによりて現界せし我らと比べ、その顕在化、あまりに脆弱! だがその女の広げた両腕より先に、我ら、一歩も進めざるなり! 無言の気迫、我らと同じく強化外骨格に宿る魂に匹敵。 何者か。 こやつ、何者か? 「そこをどけ!」 この女、威圧ごときにたじろぐわけなし。 かえってその足、我らの方に進め来たるなり! そして、こともあろうに、この女… 我らの認識を逆に侵略開始せり! 零(ぜろ)細胞の主導権、奪取さる! 八神はやての頭部より着装解除、地に落下。 「おのれ…」 だが刹那、我らは見た。 時を超え刻まれし哀しみの記憶! それは侵略の歴史であり愛憎の歴史! 悪しき認識によりて本質をねじ曲げられ、 災厄として現界させられる終わり無き苦痛! 心ならずの滅尽滅相、愛するものを自ら蹂躙する宿命! 幾度死せども強制転生の無間地獄! 己を滅ぼすことすら不可能なり! かの者は夜天の書、のちの呼び名を闇の書。 我らとなんら変わらぬ怨嗟の塊! 「そのような女が何故?」 我ながら愚問なり。 その終焉の歴史にて、我らが無駄口閉ざされたり。 永劫の痛み、すべて受け入れた上で現実への回帰を選択、 闇の書をもろとも光の中へ導いた少女こそ、あの八神はやて! 「きさまの、名は!」 祝福の風、リィンフォース! 幾星霜の彼方にめぐり会えし真なる主(あるじ)を地獄に引きずらぬため 自らこの世を去った魂の、ほんの残滓の一欠片(ひとかけら)。 奴にとっての八神はやては、我らにとっての覚悟と同じ! 心つないだ友にして、身命賭して守るべき主! 「主を殺す前に現実を見よ」 「なに!」 「すぐに必要ないとわかる」 その言葉を最後に、リィンフォースの最後の欠片、消滅せり。 …否、主を守護せんがため、涅槃より舞い戻っていたのか? 今となっては、我らにもわからぬ。 ともかく、言われた通りに現実の様子を見るより他にあるまい! うちは、なんて、ひどいことを。 この子に、この子らに、なんて、ひどいことを… 頭から外れた零(ぜろ)が、うちの顔をぼんやり見ていた。 「零(ぜろ)ぉぉ―――――ッ!!」 抱きしめて駆け出す。 ひどすぎや、こんなんひどすぎやで、こないなこと、こないな… ほとんど、なんにも考えられんかった。 ただ零(ぜろ)が痛くて、苦しくて、 そんなこと、うち今まで、なんにも考えとらんで。 『もの扱い』しとった。 『もの』以外の何だとも思うとらんかった。 それがくやしくて、みじめで…こんな、ひどすぎる! 「元に戻したる、今すぐ元に戻したる!」 気がつけば解析室に殴り込みかけとった。 ガラスケース叩き割って、零(ぜろ)の身体を引きずり出しとった。 でも、うちの手には重すぎて、全然動かせのうて… しょうがないから、無理矢理ケースの中に入り込んで、 やっと零(ぜろ)の頭を戻してあげられた。 「ごめんな…ごめんな」 生体保存用の溶液に浸された零(ぜろ)の身体は冷たかった。 うちは今まで…この子の首を、はねていたんや! 首はねたまま引っ張り回して、さらし首にしとったんや! その隣でうれしそうに、この子の力が欲しいだとか! 「痛かったなぁ、辛かったなぁ、苦しかったなぁ… 気づいてあげられなくて、ごめんなぁ…ごめんやで。 うち、最低や…最低やんかぁぁぁ…」 涙が止まらんかった。 痛くて、辛くて、苦しくて。 全然気づかなかった自分が、あまりにも非道すぎて。 「いきなりどうしたんだ、デバイスに操られたか?」 「はやてちゃん…ガラスで、手が、頭が、血が…!」 「素手でガラスなんか割るから、無理に中に入るから!」 うしろから来るなのはちゃん達。 せやけど、そんなのどうでもええんや。 「この子らの方が、ず――っと痛いねん、辛いねん! こんな痛みじゃ…全然、足らへん。 こんな痛みじゃ…」 この子らの痛みをわかるためには、二度や三度死ななあかんねん。 うちには、そんなこと、できひん。 生命惜しいねん、死ぬの怖いねん。 なんてさもしいんや、自分。 なんて、自分勝手なんや。 この子のために泣きわめくことしかできないんか… 『もうよい! もうよいのだ、八神はやて!』 「…っ?」 『おまえは我らのかわりに泣いてくれている。 我らには流せぬ清浄なる涙にて、我らが心を洗ってくれている。 ゆえに我らはおまえを許そう。 おまえも我らを許してくれ!』 「零(ぜろ)…」 『それに、我らは知った! おまえの惜しむ生命は、決して我が身可愛さから来るものではない! 牙持たぬ衆生の嘆き、背負うているのがその身であろう! 何を恥じるか、胸を張れ!』 腕の中から零(ぜろ)が、語りかけてきてくれた。 うちを許すって、言ってくれてる。 「でも、うち、みんなに、あんなひどいこと…」 『ならばひとつだけ誓ってもらおう! 魂の盟約なり』 「誓い…うち、誓うわ、それで許されるなら、なんでも!」 『二度と人をもの呼ばわりしてくれるなよ! 我らが友、八神はやてよ! …さあ、泣き止むがよい。 我らが「管制人格」は男なり! 女を責めて泣かせたとあっては、覚悟に合わす顔がないのだ!』 「…ごめんな、ありがとな」 『良い! それよりも刻め、誓いの言葉をその胸に!』 「うん」 ケースの中から這い出して、立ち上がった。 それから、零(ぜろ)と向き合った。 リィンフォースとそうしたように。 『 「 誰 に も 人 を も の 呼 ば わ り す る 権 利 は な い ! ! 」 』 盟 約 宣 誓 疾風(はやて)と零(ぜろ) ここに邂逅す 前へ 目次へ 次へ
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「これは…ダメだよ」 高町なのはに提出した新兵訓練案、この一言にて却下されたり。 上官なれば否やも無しだが、己があやまち正すも当方の任務。 ために聞くは、問題点と、その程度。 「短期的に効果は上がるかも知れないよ? だけど、それだけ。これじゃ強くなるより、みんなをすり潰す方が先になっちゃう」 しかし、われらは『対超鋼』。機動六課が発足した今、いつ出撃命令が下るかわからぬ。 短期間で練り上げねば、皆を死にに行かせることになるではないか… 「覚悟くん」 「…はっ」 「身長130cmの男の子に、今すぐ180cmになりたいって相談されたらどうする? 覚悟くんなら、なんて言ってあげるのかな?」 「…………」 返す言葉、なし。 不退転の心構えをもってしても、どうにもならぬことがある! 可能な助言といえば、月並み千万な言葉しか並ばぬ。 だが、その180cm。今すぐ必要ならばどうするか。 「そのときのために、わたし達がいるんだよ。 あの子達の後ろで支えてあげるの」 「だがそれでは、他を頼った戦いが身に付いて…」 「戦えないうちはそれでいいと思うな。 まさかいきなり改造人間と戦わせるつもりは覚悟くんだってないよね?」 「うむ…だが、想定はすべきだ」 「そこが対超鋼戦術顧問、葉隠覚悟の腕の見せ所だよ。 他の部分は、教導官、高町なのはを信じてほしいな」 なるほど。勘違いをしていたか。 改造人間との遭遇時、新人四名が増援到着までこれをいかにしのぎ生存するかの手段を確立し、 これのための訓練、演習計画を提案し実行するのが当面おれに求められた役割というわけだ。 今の今まで、おれは新人四名にて生物兵器をいかに倒すかをばかり考えていた。 そのためには現行の訓練時間ではあまりにも足りぬから、時間外の特別訓練案をこの高町なのはの元に持ち込んだ次第であったが。 「それにね…この訓練案。時間外じゃなくても、みんな、すぐにまいっちゃうよ」 「かの生物兵器を倒すには最低限、これだけ出来ねばならぬ」 「これが最低限だとしても、みんなにはまだまだ遠い一歩だよ。 必要なのは強くなりたい気持ちと、地に足がついた自信。 わたし達があせったら、みんなもきっと無理をして…自分の立ってる場所を見失っちゃうから」 …だが、死狂いでなければ届かぬ場所もある。 現人鬼、散(はらら)。 きさまがこの世界にいるというのならば、おれは… 魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果 第十二話『焦り』 「どうした、打ってこい」 「はぁ、はぁ…」 息が荒いのは酸素が足りないからじゃない。 どちらかというとこれは、緊張。 四度目の突入角が、決まらない。 「臆したか、スバル!」 「ってぇぇぇりゃああああああ」 実戦じゃ、敵は待ってくれない。これ以上ぐずぐずできないんだ。 ウイングロードを展開。仰角およそ十五度の頭上から、あたしは突っ込む。 そして。 「積極」 葉隠陸曹の鉄拳が、あたしのお腹のやや上あたりをとらえたんだと思う。 まず衝撃。吹っ飛ばされて地面に墜落。 それから、耐えがたい吐き気と痛みが襲いかかってきた。 「うげぇぇっ…げほっ、ぐぅぅ」 「焦りのままに仕掛けるな、馬鹿者! シューティングアーツは一撃必殺にして一撃離脱。 道が通らぬままに打つは自殺だぞ」 口まで戻ってきたのを呑み下しながら、立つ。 …さすが、覚悟さんだと思う。 今は、攻撃せずに追いかけてくる覚悟さんを迎え撃つ形で、 後ろへ後ろへと引きながら、『道が通る』瞬間を見計らって打ち込む訓練の最中。 目標は、二十分以内に十発。 もう十五分経ってるのに、まだ一発も決められていないから、どうしても気が急いてくる。 この人相手だと、普段、通っているように見える道でも、雰囲気的に打ち込みにいけない場面がすごく多い。 というか多分、99%はそれなんじゃないかなと思う。 そんなだから、ごくごくたまに見える道もなかなか信じ切れなくて、 気がついたらあの人の回りをぐるぐる回ってるだけになってしまっている。 「受け身はしっかり取れたようだが防御魔法が甘い。 これが実戦であれば悶えているうちに止(とど)められよう」 「は、はいっ…」 「では来い! 十発打ち込めぬのであれば、十殺に匹敵する一撃を以てせよ」 「はいっ!」 ローラーブーツ、再加速。 旋回しながら間合いを開き、向かいの広い道路へと出る。 ここだったら、今までよりはいくらか道は通りやすくなる。 反撃する側の幅も増えるから、プラスマイナスで言えば微妙なところだけど… 覚悟さんは、乗ってきてくれた。 こっちに向かって駆け足で、あたしは頭上…見えた、道! ウイングロード、展開…いや、早い。早すぎた。 でも今更取り消せない。このまま突っ込むしかない。 だったら迷って打ち込んだりしない。決めたら、打ち込め… 「積極」 今度は左胸、少し下あたりに拳がめり込んだ。 ああ、実戦なら間違いなく即死だな。 痛みを感じるよりも前に、あたしはそう思った。 「ここまで」 「…………」 寝転んで青空を見上げていたところで、二十分、経ってしまったらしい。 まずはすぐに立ち上がる。こんな情けない格好、ずっと見せていたくもないし。 …にしても。 「一発も、入らなかった…」 これじゃあ、訓練以前の問題。 一発も入らなかったという結果だけの話じゃない。 打ち込みに行こうにも身体が動いてくれない所が多すぎた。 戦わずして負けたみたいなもので、これじゃあ、あんまりにも不甲斐なかったけど。 「おまえの『攻め』の気は伝わってきていた。 そう悪いものでもないと思う」 覚悟さんにそう言ってもらえると、散々だった今の訓練も、少しは誇らしく思えて。 だから、次はもっとうまくやる。 「良き師に学んだようだな」 「…はいっ、おかあさんと、ギン姉に」 あなたの背中を見たあの日から。 強くなりたいって願ったあの日から。 あたしはずっと、求めてきたから。 「でも、あたしの強さは、ぜんぜん足りない」 求める強さには届いていない。 もう二度と、あの子みたいな死を見たくなくって、 だからあたしはここにいる。 「鍛えてください。誰にも負けなくなるように」 「うむ…では征くぞ、今度はこちらの打つ番だ」 「はいっ」 「…で、今日も吐いたのね」 「うん、お腹だけ守ってるわけにもいかないし」 見てるだけで胸焼けがしそうな量を胃袋にかき込んでいくのは、 いつもそんな風に、いちいち中身を絞り出してくるからなんだろうか。 特盛り二人分のスパゲティをみるみるうちに減らしていくスバルを見ながら、 しょうもないことを私は考えていた。 「わかってはいるけど、よくやるわよ。葉隠陸曹」 「痛くなくば覚えぬ、って。あたし、間違ってないと思うから」 私やエリオ、キャロも身をもって経験しているからわかるけれど、 陸曹の訓練は『痛み』という一点で過酷さをきわめる。 シューティングアーツ…拳闘を主体とするこの子は、それをほぼ毎日やっているんだ。 今は制服を着込んでいるからわからないけど、 この子の服の下は、絆創膏と湿布だらけ。 一緒にシャワーを浴びに行くたびに、新しい青アザをこさえているのを見つけてしまう。 毎日毎日、生傷の絶えない子だ。 陸士訓練校で知り合ってから全然変わってない。 ドジで不器用なくせに、危険なことは一番最初に引き受けようとする。 一番前の、一番危険な位置に、進んで身体を張りに行く。 それをフォローする私の身にも、ちょっとはなってほしいけど、 だけど、私も負けていられなくて。 この子があの人の背中を目指してきたように、私にだって、ゆずれないものがある。 「ティアもよく食べるね」 「やかましいのよ、そういうこと言わないの」 「会った頃は、もっと食が細かったから」 「しっかり食べなきゃ務まらないでしょ、それだけよっ」 肉体と魔法をフルに行使するこの仕事だ。 身体をしっかり作っておかないと、続けられっこない。 それだけ…本当に、それだけ。 たくさん食べるようになったのだって、当然の流れで。 だって、そうでしょ? なんでこの子につられてたくさん食べなきゃいけないのよ。 むしろ私は指導する側。 何かにつけて限度を知らないこの子に、いつだってストップをかけてきた。 なんで私がこんなことをしてるんだろうって思ったことも一度や二度じゃない。 そんな私の気も知らないで、憧れの人を前に舞い上がって…いい気なものよ、ホント。 ふと、まわりを見回し、隣のテーブルの様子を目に留める。 あの二人…エリオとキャロが、仲良くご飯を食べていた。 詳しい事情は知らないけれど、キャロはやたらとエリオになついている。 エリオの方も気後れはしてるけど、まんざらじゃないみたいな様子で。 今だって、落ち込んでるキャロに頑張って話をふったり、元気づけようとしているみたい。 持ちつ持たれつはいいんだけど、私なんかの目から見たら、そうやって甘やかすのがいけないと感じてしまう。 そんな風に他人に頼った心を根付かせるから、戦闘訓練でも気後れするんじゃないのか。 …そこまで考えて、少し、むなしくなる。 だって、それを言ったら、私とスバルだって多分、似たようなものなんだから。 そろそろ考えなくちゃいけないと思う。 今は機動六課にいたって、みんないつまでも同じ道を歩くわけじゃない。 夢というのは結局、自分自身でしか面倒を見られないものだから… 「? どうしたの、ティア」 「どうもしないわよ」 「あの二人、仲、いいよね」 「…そうね。訓練もあの調子で順調ならいいんだけど」 「へ?」 目をまんまるにするスバル。 幸いにしてこの子にはまったく気づかれていないようだが、 我ながら大人げないにもほどがある発言だった。 …自己嫌悪、もとい、反省。 「明日はシグナム副隊長との模擬戦でしょ? 食べ終わったら作戦、詰めるから」 「ああ、それで」 別に、それで、でも何でもないのよ、スバル。 あんたはお人好しすぎて、たまにムカつくのよ。 ともかく、今の私に必要なのは、上司の誰かに「出来る奴だ」と認められること。 でなければ、実戦の一角にすら出してもらえないかもしれないのだ。 そして今の私達は四人で一人のようなもの。 全員で認められなければ意味がない。 私は、立ち止まりたくない。 今のポジションにあぐらをかいて、油を売ってるヒマなんか、ない。 多分、それはみんなも同じはずだ。 私達は、戦うためにここにいるんだから。 早く強くなって、早く誰かを助けに行って… 「作戦会議だったら、オブザーバーも役に立つと思うな」 そこにいきなり声をかけてきたのは、私の直属の上司にあたる人。 私を見込んで、機動六課に引き入れた人。 「た、高町一尉?」 「なのはさん、でいいってば」 スバルにとってはこの人も、自分の変化のきっかけで。 空港火災から救い出してくれた大威力が心の底に焼きついているから、 正面突破の砲撃魔法に同じ名前を借り受けて。 じゃあ、私にとっての、この人は? 「わたしも混ぜてもらっていいかな、ティア」 「…はい」 「元気ないなぁ。気合い、入れていこ?」 「はいっ」 機動六課、屋内訓練場。 第九十七管理外世界、日本国にある剣術道場を模して作られたこの場所は、 葉隠覚悟が好んで座禅を行う場所だと知っていた。 というより、おそらくはこの男の存在が無ければ、このような施設は作られなかっただろうと思う。 私、シグナムのみならず、大小様々の影響をこの男から及ぼされていることは確かだ。 そのようなこと、改めて感じるまでもないことだが。 「シグナム二尉」 案の定、私が道場に足を踏み入れると同時に敬礼を受けた。 常に感覚が研ぎ澄まされているのもあるだろうが、互いの足音を覚えているのだから当然か。 戦士が半年、一緒に暮らせば、そうなる。 「いい、楽にしていろ」 この言葉は合図だった。 楽にしろと言わない限り、部下で居続ける。 彼の最小限のけじめであり、ある意味で最大限の譲歩だ。 ほとんど誰もが九割九分、出会い頭にこう言うのだから、 もしかすれば彼も辟易しているかもしれないが、構うことはない。 「なのはから、聞いた。おまえが焦っているとな」 「新兵訓練案か。無理を心得ぬ浅慮であった」 「いや。私が聞きたいのはおまえ自身の問題だ」 「おれの…?」 大体、わかるのだ。 八神家の誰もが理解しているだろう。 私もそのことを、この身体を以て知っている。 「やはり、おまえは散(はらら)を見ている」 「む…」 「フォワード四人に、おまえ自身の姿を重ね見ているのだろう?」 いつ現れるかわからぬ改造人間。 立ち向かうべき新人達は、戦力と呼ぶには未だ頼りなく。 これは、未だ存在の確認できぬ散(はらら)と、 その姿を求める覚悟の関係に等しいものだと言えよう。 「…かもしれぬ」 「おまえの拳を何度受けたと思っている。 そのくらいは、わかるよ」 言葉にせねば伝わらぬ思いもあるが、 拳に乗せる重みは時として千の言葉に勝るのだ。 剣を合わせた者同士だからこそわかる。 「やはり、おれは未熟だ。 おれ自身の焦りが、訓練案にもにじみ出るとは」 平静そのものの表情ながらも若干うつむく覚悟に、 私は少し苦笑して。 「言っておくぞ、覚悟。 そんなおまえの姿が、私には嬉しい」 何を言っているのだかわからない。 覚悟の顔にそう書いてあるのに構わず。 「おまえ自身がいつも言っているはずだぞ。 痛くなくば覚えぬ、と。 おまえは今、自分の未熟さに痛みを感じているのだろう?」 「だが、おれ自身でそれに気づくことができなかった」 「そうでなければ、この世の誰もおまえの役には立たないだろうよ。 それとも、なのはや私、主はやては、おまえにとって無用の存在か?」 「そのようなことはない!」 鋭い目つきと声が帰ってくる。 固く揺るがぬ確固としたものを込めて。 何もそんな力んだ返事を返さなくともいいのに。 また思わず笑ってしまいながらも、私は目を合わせ、しっかり頷いた。 「…なら、それでいいということだ」 そうやって言い切ってくれる限り、私もそれに報いるとしよう。 今の返事、主はやてにも聞かせたかった。 「第一、おまえには可愛げが無さすぎる。 たまには隙を見せてくれなければ、共に戦う甲斐がない」 「隙を見せよと?」 「冗談だよ。困った顔をするな」 ともあれ、大丈夫そうだな。 慣れぬことをさせている自覚があるからか、 はやても覚悟のことを常に気にかけていて、 だから私もこうして仕事の合間を縫って話を聞いて回ることになる。 シャマルとヴィータも同じことだった。 いや、むしろ八神家ゆかりの人間全員が同じことだと言っていい。 だから、なのはの方から朝一番で私にコンタクトを取ってきたのだ。 不必要なまでの焦りが教練を行う上官から発せられては、肝心の部下が精神的に追い込まれかねない。 そういう実務的な面からも情報の共有を急いだというが、今回はそれが功を奏したと思いたい。 もっとも、覚悟に散(はらら)という宿敵ある限り、心の奥に潜んだ焦りはまたいつ顔を出すかわからないのだが、 それを本人に自覚させることができただけでも、今回は良しとするべきか… 「フォワードの四人だがな、明日は私との模擬戦だ」 「あなたの見立てはいかに」 「ここ十日を見る限り、キャロをどうにかしなければな」 「おれの、せいかもしれぬ」 魔法自体は遜色なく使えるのに、実戦形式の訓練になると、途端に失敗が込み始めるあの少女。 魔法を出すタイミングが早すぎて連携の足並みをバラバラに崩してしまうのだ。 特に、接近戦を挑まれるとその脆さはひどい。 最初のうちはそこまでまずいものでもなかったのだが、一度の失敗からどんどん軸がぶれるように悪化していき、 ここのところのフェイトの話題のほとんどがキャロの心配で占められてしまうような有様である。 「まあ、明日の立ち会いで確かめさせてもらおう。 おまえのせいかどうかもな」 「頼む」 覚悟に確かに頼まれてから、私は道場を後にした。 前へ 目次へ 次へ
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覚悟を選びて半年後、またも倉庫の暗闇に逆戻りとは。 解き放たれた戦略兵器を恐れるは当然。 時空管理局の封印処置もむしろ全面的に支持するものなり。 我らが瞬殺無音、盗み取ろうとするものはとり殺すのみなれば! だがこれしきで、覚悟の強さを封じられたと思うたか。 覚悟の強さは我らの強さにあらず! そして今、目に見えぬさらなる超鋼をまとっておるなり! 我ら、ただ再び目覚めるその時を待ち続けるのみ。 魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果 第六話『葉隠禁止(後編)』 『零細胞より酸素緊急供給! 同時に造血開始!』 覚悟くんの身体がすごい勢いで回復していくです! 『すごいです、零(ぜろ)! すごいです、強化外骨格!』 『当然なり! 我らこそ覚悟と一心同体! 初心のきさまに遅れはとらぬ!』 「零(ぜろ)、リィン、おれの戦闘可能時間は?」 …と、覚悟くんが聞いてきたですね。 おしゃべりしてる場合じゃなかったです。 一足先に零(ぜろ)が答えてくれました。 『目下、緊急加療中なり。 十分…否、五分以上の交戦は避けよ』 「五分以内に幕引き了解!」 やっぱり覚悟くんに後退の二文字なしですね。 なら欠損した脳細胞機能、リィンが必死でカバーしなきゃです。 激しく動き回ってる最中にズッコケたら大変ですから。 『リィンよ、零細胞が脳を補填するまでの間、頼んだぞ!』 『頼まれたです!』 『それにしてもなんたる失態! 覚悟ともあろうものが、きさまの手を借りねば戦えぬまでに打ちのめされようとはな!』 『…………』 なんで、つっかかるですか? 『帰り着いたら今一度、戦士の心得なんたるかを問い直させてもらうぞ、覚悟!』 「合点承知なり」 『必ずだぞ、忘れるな、覚悟よ』 「了解」 秒速270mのスピードで外に飛び出す覚悟くんに、 ぶっちゃけ零(ぜろ)はちょっとしつこいと思ったです… 「ぶああああ~ しつこい! 今日はもう店じまいだよ~」 でも、このオバケには、しつこくしなくっちゃダメですね。 放っておいたら、また誰か死んじゃうですから。 バカでっかい身体をずかずか這わせて、こっちにカメラ向けてきたです。 真っ昼間の遊園地に、こんなヘンなの、場違いです、粗大ゴミです。 「だからぁ~ また来てね~~」 「否! 本日限りにて閉店なり!」 「オフで撮るのは女の子だけだぁ~」 「ならばおれが写してやろう! きさまの真に撮るべきものを!」 キマッてます、カッコいいです、覚悟くん! けど、そうは言っても、どうするですか? これはいちおー、聞いておかないと… 『覚悟くん、零(ぜろ)、まわりにはまだたくさん人がいるですよ?』 『なるほど、敵方の熱線砲、回避すれば流れ弾にて大被害と言いたいか! 見かけによらず頭は回るようだな、リィン!』 『見かけは関係ないです、なんでつっかかるですかーっ、ドクロ軍団』 なんでいきなりこんなふうにムカッとくることばかり言うようになったですか。 もしかして、リィンのおうちからケリ出したのをネに持ってるですか? おうちを間違える零(ぜろ)の方が悪いですよ、あれは。 どれだけビックリしたと思ってるですか… そ、そんなことよりアイツのカメラですっ。 『とにかく、そういうことですけどーっ』 「了解、ならば問題はない」 『でも、よけられないですよ?』 「おれと零(ぜろ)にはむしろ好都合!」 『刮目して見ておれ!』 ビシッと構えて動かない覚悟くんです。 なんだか楽しそうですね、零(ぜろ)。 ちょっと、気持ちはわかるですよ。 はじめてマイスターはやてと一緒に戦えたときのリィンと、きっと同じだと思うですから。 ひどい実験から零(ぜろ)が生み出されたことは聞いたです。 そんなことを二度と許さないために、実験に殺されたみんなが意志になって宿っているのが零(ぜろ)だっていうことも。 そんな痛さ辛さをわかってくれた、零(ぜろ)のために泣いてくれた覚悟くんをマイスターに選んだことも。 そんな人のために戦えるのなら、うれしくないわけないですね。 「しょお~がないから撮ってやる 本日最後の 熱 写 暴 威 」 「生涯最後と修正せよ!」 来たです、怪人のカメラビーム。 覚悟くん、零(ぜろ)、全然よける気なしです! なら何か、プロテクションとか、そういうので防御する気ですか? する気なしです! 腕を広げて大歓迎です! リィンと一緒に真っ黒焦げです、バーベキューです! 信じていますとは言ったけど、正直これはキッツイです! …とか、思ってたら、覚悟くん全然無傷です。 零(ぜろ)も平然としてます。 『ど、どうなってるですか?』 『節穴だな、リィン! 目に見えなくば音に聞け!』 『…あ』 気づいたです。 ジュージューブスブス音が鳴ってます。 覚悟くんの目を通して見えました。 腕や足の装甲が真っ赤に光って… 全 身 赤 熱 『彼奴の熱線砲の出力、すべて我がものとして流用したのだ!』 『だ、大丈夫なんですか、こんなことして』 『もとより我らが機能なり、一切無問題のこと』 少し得意げに零(ぜろ)が話してるところに、オバケが近づいてきました。 「いいね~その色 今頃中身は真っ黒焦げかな~」 オバケは覚悟くんが死んじゃったと思ってるみたいですね。 たしかに普通はそう思うですね、多分。 「これがきさまの撮影行為か」 「…ななっ、なぁぁ~~っ?」 カメラ怪人がビックリ怪人になりました。 拳を固めた覚悟くんが腰を引くのを見て、 あわてて逃げて行こうとしてるですけど、どー見ても遅いです。 「ならば当方にも撮影の用意あり!」 「きゃあああ~~~っ プライバシー侵害反対…」 「 因 果 !!」 特大が、極まったです。 「あッぶるッ?」 弾かれるみたいに地面から飛んだ覚悟くんの拳が怪人の顔面にめり込んで、 燃やしながら全部バラバラにブチまけたです。 どこが撮影なんだか、リィンには全然わかりません。 でもいいんです、覚悟くんカッコイイですから。 「おのれの醜さもわからぬものに芸術を云々する資格はあるまい!」 …できれば、もうちょっと…いろいろと飛び散らない倒し方にしてほしかったですけど。 でもこいつ、人間だったですかね? 今頃になって気になるです。 「南無」 『南無』 『…ナムです』 死んだ人がユーレイになったりしないように祈ってあげるです。 はやてもたまにやるですから、リィンも知ってるですよ。 『次に生まれてくるときは、ヒトを食べたりしないでくださいです』 「そのための因果。 地獄で魂を清めてくるがいい」 覚悟くんが、後ろに振り向いて構えました。 リィンも零(ぜろ)も気づいてるです。 ガジェットがあちこちから覚悟くんの回りを取り巻いてるです… 『覚悟くんが狙い、ですかぁ?』 『否、それでは常に監視を受けていたことになろう。 敵意の視線に気づかぬ覚悟ではない!』 『じゃあ、いったい』 「関知せぬ。 いかな企み背後にあろうと、平和への敵意に他ならぬなり!」 『…ですね!』 「邪心には因果あるのみ!」 『です!』 ぱっと見だけで標準型のガジェット八体。 囲まれちゃうと楽勝にはちょっときついんですけど。 「零式、積極! 直突撃(じきづき)! 肘鉄(ちゅうてつ)! 手甲(しゅこう)! 掌底(しょうてい)! 肉弾(にくだん)! 膝蹴(ひざげり)! 延髄(えんずい)! …踏破(とうは)!」 足が地面を蹴ったと思ったら、あとは流れ作業の覚悟くんでした。 瞬殺です。 リィンもユニゾンしてなかったら目で追えなかったと思うです。 AMF(アンチ・マギリング・フィールド)があってもぜんぜん関係ない覚悟くんは 普段でもガジェットを素手でボコボコ壊して回るんですけど、 零(ぜろ)を装着したら、そんなもんじゃなかったですね。 ド カ ァ ァ ァ ン 最後の一体を踏みつけて飛んだと同時に、全部一緒に爆発したです。 覚悟くんすごいです、ヒーロー番組です! …けど。 『まだ来るですよ? 四、五、六…』 「すなわち一網打尽」 『だが制限時間は残り一分! それ以上は後遺症の恐れありと知れ!』 「悪質玩具の始末など、三十秒で釣りが来る!」 『それでこそ覚悟!』 ほんとは今すぐ倒れてもおかしくない覚悟くんなのです。 ものすごく強い精神(こころ)があるから、身体が壊れそうでもへっちゃらで動き回るですね。 今のリィンは一心同体ですから、わかるですよ? だから、ちょっとした独断行動です。 覚悟くんと零(ぜろ)が、ボッカンボッカン壊してるスキをついて… ボッカンボッカン壊してやってくるヘンなヤツがいます? こっちにシャカシャカ走ってきてるです? 「また遅刻しちゃったー」 今度は女のヒトみたいですけど、やっぱりデカイです。 手がたくさんあって、虫みたいな足もたくさんついてて、 お腹が顔になってて… そんなことより、腰(?)につけてる四つのポシェットの中身。 …ヒトの、首です。 苦しそうな顔をした生首が、ぎっしり詰まってるです。 「またも怪人!」 『玩具と交戦するとは、別組織ということか?』 「あれ、激写(うつる)やられちゃったのー? アハハごめーん あたしダメなのよ B型だから」 「…疾(と)く答えよ。 きさまの所属組織、そして、きさまの所持する鞄の中身」 覚悟くんがにらみます。 リィンだってにらむですよ。 ヒトが死ねば、誰だって悲しいんです。 たとえ関係ないヒトだって。 それを、こんな、ヘラヘラしてるのは、許せないですよっ… 首だけにされた人達を見るにも、さっき覚悟くんが倒した怪人のバラバラ死体を見るにも… ヒトが死んだ姿を笑いものにするやつは、許しちゃいけないです。 ゼッタイです。 「もぉ~ こまかいこと気にしないの あなたA型でしょ? 几帳面なヒ・ト」 覚悟くん、無言で構え。 リィンも、無言で構え。 『我らと同じ怒りを抱いたか、リィン』 『…はいです』 『なれば我ら、心はひとつ!』 悪 鬼 討 滅 覚 悟 完 了 『でも、覚悟くんはオヤスミの時間なのです』 「…なに?」 『覚悟くんだけが覚悟完了じゃないですよ?』 リィンが呼んだ、みんなが来たです。 リィンだけじゃないのです。 みんなの心がひとつなのです。 右と左から来る爆発音を聞くですよ。 ガジェットの破片をぶちまいて最初にやってきたのは… 「世話を焼かせるヤローだな!」 「ヴィータ!」 「病人は下がって見てな、あたし一人でも充分すぎる」 その後ろから迫ってきてたガジェットを鉄拳でぶっ壊したのは… 「それは無しだ、ヴィータ」 「余計なことしてんじゃねーよ、ザフィーラ」 「おまえがそれでどうする! そこの覚悟を戒めに来たのだろうが」 「…ちっ」 ヴィータちゃんのグラーフアイゼンが鉄球を打ち込むたび、ザフィーラがひとつ跳ねて殴るたび、 残り少なくなったガジェットが、あっという間に消えていくです。 覚悟くんに、手出しをするヒマなんかあげません! 「あ、あ、あ、あなたたち、あたしぬきで話進めてんじゃないわよぉ~ B型のあた~しは、とって~も短気なのォ~!」 「貴様など知るか!」 「おひょっ?」 怒り出した怪人は、ザフィーラに振り向かれもせずバインドされました。 鋼(はがね)の軛(くびき)でグサリグサリ。 光のトゲで地面に縫われて、もうピクリとも動けませんね! 我に返った覚悟くんがトドメを刺そうと拳を振り上げます…が、やさしく掴まれて止められました。 後ろからきたシャマルにです。 となりには、シグナムもいます。 「葉隠覚悟、おまえは半年もの間、我らと共に何を見ていた?」 「…平和を! 守るべきものを!」 「そうか。 ならば我らと同じだが、ひとつおまえは読みが浅い」 つかつか歩いて、怪人に向かっていくシグナムを、覚悟くんは見ています。 握った拳はまだ下ろさずに、じっと、後ろ姿を見ています。 「八神家で寝泊まりし、我らと共にあった時点で、 すでにおまえの生命はおまえ一人のものではない。 おまえが決死に臨んだとて、我らがそれを縛るだろう。 おまえの生命は我らのものであり、はやてのものであるからだ」 『血迷ったことを! 覚悟は誰のものにもあらず!』 「知っているぞ零(ぜろ)! 知っているとも…だからこそ! わかるように言ってやろう…いいか?」 抜きはなっていたレヴァンティンを鞘に収めて、シグナムは言いました。 「おまえは不滅だ。 我ら四騎が、おまえの死を決して許しはしないのだから。 おまえが誰のために戦おうとも、我らの勝手は変えられまい? だからな…」 少しだけ顔を振り向かせて、小さく笑ったです。 「あまり、一人で格好つけるな。 くさくて見ておれん」 「………」 覚悟くん、なんともいえなくなっちゃったですね。 握った拳がほどけたところに、シャマルが治癒魔法をかけ始めました。 ガジェットはもう全滅してます。 ずいぶん静かになったです。 あと、うるさいのは…アレだけです。 「うげげっ、うごけなひ…うごけないけどB型のあた~しはこりない女! わざわざ剣をしまっちゃうなんて、あなたもマイペースのB型…」 お腹についてる顔の口からシグナムに向かってゲロ吐いたですけど、 単にエンガチョなだけで終わったですね。 すでにシグナムは空中ですよ? 「貴様など わが剣の錆となる価値すら無し!」 跳躍、空中、開脚、捻転 ――― 破!! 魍 魎 轟 沈 し ず め ばけもの (かかと おとし) 「いざべら!!」 …まっぷたつ、です。 ポニーテールをなびかせて空中をひらひら舞ったシグナムのカカトが最後にぎゅんと音を立てて、 怪人の頭をまっぷたつに裂いてまき散らしました。 何ごともなかったように着地して、こっちに戻ってきたシグナムは、 またちょっぴりだけ笑って、覚悟くんと健闘を称え合ったです。 「道の先達に未熟な技を見せつけるほど、みっともないことも無いが… 私の蹴りも、捨てたものではないだろう?」 「あなたほどの者ならば、魔法に頼らずともいずれ!」 「すまんな、これが我らの研ぐ牙だ」 「今一度、立ち会いたくなった」 「一度と言わず何度でも来い。 今までそうしてきたようにな…だが」 そこで言葉を切っちゃって、アゴでくいっとシャマルに合図。 まかされたシャマルが後を継いだです。 「今は、ゆっくり、おやすみなさい。 静かなる風よ、癒しの恵みを運んで…」 もう、完璧に戦いは終わりました。 安全です。 数分して、覚悟くんはその場に座り込んで気絶しました。 シャマルの静かなる癒しに包まれながら… 『戦士の休息を認める!』 おやすみです、覚悟くん。 「…おやすみな、覚悟君」 「はやて」 「ごめんな、覚悟君、ごめんな…」 六日後、おれの目覚めをまずは喜んでくれたはやては、 共に悪い知らせを携えてもきた。 強化外骨格、零(ぜろ)の厳重封印、正式に決定さる。 超鋼着装せしおれの戦力判定は、魔導師に換算してSSに達していた。 魔力なき人間にこれほどの威力を発揮させる存在に、管理局は危機感を抱いたというのだ。 「わたし、零(ぜろ)を守れへんかった。 持って行かれるのを、だまって見てるしかなかった」 管理局の手に零(ぜろ)を引き渡したのは、他ならぬ、はやて。 もはや彼女には管理する権限の無きゆえに。 …すなわち。 「何を泣く。 はやて」 「…覚悟君?」 「零(ぜろ)は、征くべき場所へ打って出たのだ! おれたちは急ぎ追いつかねばならぬ!」 零(ぜろ)はすでに高き権限なくば触れられぬ位置にあり。 なれば、何を為すべきかは決まっていよう。 おれはすでに決めているのだ。 はやて、あなたはどうか? 「……ははっ」 少しの間、呆けたように沈黙したはやては、 思い出したように笑い出す。 「あははっ、はははははっ」 快活なる笑み。 将たるもの、そうでなくてはなるまい。 さもなくば、ついてくる者もついてこぬ! 「…せやな! 寂しがって泣いてたら、零(ぜろ)に笑われるわ!」 「それでこそ、はやて!」 「うん!」 湿気った空気は一掃。 決意はからりと日本晴れに限るなり! 「三年や!」 「三年!」 「三年で、わたしの城をつくる。 時空管理局の一角を張る、わたしの部隊や!」 幾度か聞いたはやての夢。 助からぬ人々を助けようという理想。 それは今この場にて、現実となるを約束されたり。 そして、おれも。 「旅に出る!」 「旅!」 「葉隠一族のとるべき道は、平常心にて死ぬことに非ず。 非常心にて生き抜くことにあるなれば!」 「家族ごっこは、今日で終わりやな」 「忘れえぬ安らぎであった。 次に共に立つときは、ただ一介の戦士として!」 戦士、はやてに敬礼。 かりそめの家族は、もはやこれまで。 おれが背負うのは父の拳と誅すべき鬼(あに)! …だが、そんなおれの両肩に手を置いて、はやては言ったのだ。 「じゃあ、最後にひとつだけ、お姉ちゃんぶらせて、な?」 「…了解」 「ええか、これから先、これだけは絶対に取り消すことはあれへんで。 葉隠、禁止や」 「葉隠禁止?」 「覚悟君だけの生命やないねん」 おれの胸を、彼女の平手が軽く叩いた。 「ここにあるのは、みんなの生命や。 高鳴っているのは、みんなの、鼓動や」 「………」 「感じた?」 ―― 感じる。 高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラウオン、 シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ…むろん、八神はやて、あなたも。 束の間出会った人々も… クロノ・ハラウオン、ヴェロッサ・アコース、 そして…あのときの空港火災、瀕死のおれに、螺旋に打ち勝つ力をくれた、あの父、あの少女! 「背負いし生命、確認! 宿りし熱き鼓動、確認!」 「うむ、ええ子や! これにてお姉ちゃん終了!」 「次に出会えば、共に戦士!」 「歩く道は違うけど、目指す先は同じや」 「また会う日まで、さらば!」 病み上がりとて問題なし、思い立ったが吉日なり。 病室から立ち去るおれを、はやては黙って見送ってくれた。 しかし、見送りはそれのみならず。 病院一階ロビーより外に踏み出せば、そこには、 なのは、フェイトに、八神家の面々。 「なんとなく、こんな気がしてたんだ」 「なのはに黙って出て行くのは無理だよ、覚悟」 苦笑するフェイトに、なのはもうなずく。 「止めるのか、おれを」 「違うよ、見送りに来たの。 それにシャマルさんが、旅に必要なものも多いだろうって」 「急いで用意したから、水筒と磁石とシートくらいしかないけど… あと、お金、いくらくらいいるかしら…」 「これを持っていけ、覚悟。 これを見せて私の名を出せば、聖王教会に渡りをつけることができるだろう」 「あ、私からはタオル…清潔にしなきゃダメだよ? クロノもそうだけど、男の子はすぐ臭くなっちゃうから」 「リィンからはお布団です! でも覚悟くんにはハンカチですねぇ…」 皆に囲まれる、おれ。 申し訳ないが、失笑を禁じ得ぬ。 まさにこれゆえに、おれはここを離れねばならぬのだから。 「すまぬ、皆。 皆がやさしすぎて、おれには持ちきれぬ。 少し、身を軽くしたく思うゆえ、厚意を粗末に扱う無礼を許してくれ」 「…そうか、ならば何も言うまい。 私は身ひとつで行くおまえを信じよう」 そのようなおれに対し、シグナムの言はすでに皆の総意であった。 …ただ一人を除いては。 「あたしは信じてねーんだよ」 「ヴィータ…」 「だから、これ、貸す。 貸すんだからな?」 進み出たヴィータが差し出したのは、どうやら、うさぎのぬいぐるみ。 おれにはやや理解しがたい面妖な風体だったが、 その古び方は、長年大事にされた証しでしかありえぬ。 「ぜってー返せよ。 返さなかったら…殺すかんな」 「…了解した、生命に代えても返却しよう」 またひとつ、心を預けられてしまったか。 確かにおれだけの生命ではないな! どこまで行こうが逃げられぬ。 おれをからめ取ったのは、そういう宿命! ならば、覚悟完了するまで! 皆に背を任せ、おれは起つ――― ――― そして、月日は流れる! 前へ 目次へ 次へ
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【妄想属性】パロディ 【作品名】涼宮ハルヒの詰合 【名前】God 【属性】神 【大きさ】0 【攻撃力】単一宇宙常時全能。 【防御力】単一宇宙常時全能。 【素早さ】あらゆる意味での全時間で絶対に先手を取れる奴よりいくらでも早く先手を取れる。 むしろ先手・後手などという考え方自体がGodにとってはあらゆる意味で無意味なほど早い。 そして行動はそのまま相手に何もさせずにあらゆる意味でいくらでも動けるほど速い。 当然だがこれは考察外・対戦外・現実時間やそれ以上・それ以外さえも含めてのことである。 【特殊能力】God knows: Godはあらゆる意味での全知よりいくらでも上の超全知なので、 自分が勝てない相手にも絶対勝てる方法とそれを絶対に邪魔されずに実行できる方法を知っている。 当然だがこの能力が絶対に無効化されない方法や能力では勝てない奴に勝つ方法も知っているし God knowsで対処できないいかなる敵・攻撃・状況も絶対に対処できる方法と それを絶対に実行できる方法も知っている。 もちろん、これらの方法は全て自分が絶対に実行可能な方法である。 これによりあらゆる意味での全知全能よりはるかに強い奴と戦って無傷かつ相手を一撃で倒して勝利した。 【長所】【短所】全知にも程がある。 ◆考察記録--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 988 名前:格無しさん 投稿日:2006/10/21(土) 12 46 04 God: 現最上位並の素早さを持ち、一手で必ず勝つとすると、 一手目で最強になる必要がある全階層全宇宙全次元全知全能完全超越最強船団より下には勝てる。 微妙だが、作者=God~現最上層位=Godのいずれかになると思われる。 24 : ◆rrvPPkQ0sA :2016/10/05(水) 22 16 11.37 ID QjacyY/N 総当たり考察戦
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魔法少女ニニンがなのは伝3 「看病と聞いてエロイことしか考えられない……そんなお前は俺の兄弟だ~ by音速丸」 今までのあらすじ、変態セクハラ魔人と3馬鹿忍者が海鳴の町にやって来たのでした。 「ちょっ! なのはちゃんそれマジ容赦ないよ!!」 「えっと…そう言われましてもこの台本にそう書いてあるので…」 「いやっ! 幼女にヒドイ事を言われるのは案外悪くないぞ!」 「サスケさん……あんたって人は」 本当のあらすじ、音速丸ご一行がなのは達の所にやって来たのでした。 「おかしい…(若本)」 音速丸はハラオウン家の居間でスナックとコーラを食しながら話題のヤンデレゲーが原作のアニメを見ながら呟いた。 サスケが音速丸のその独り言を聞いて言葉を返す。 ちなみにサスケはさすがに何もせず厄介になるのはあまりに申し訳ないという事で家事に勤しみ部屋の掃除をしていた。 「おかしい? あ~“スクールデイ○”ですか。確かにこんな主人公が女の子とチョメチョメでニャンニャンするなんておかしいですよね~」 「ぶるううわあああ!! 違うぞいサスケ! まあ確かにそれも一理あるが……俺が言いてえのは俺達のこの状況だよ!!!(若本)」 「はあ…と言いますと?」 「俺達がここに来てどんだけ経ってるよ~サスケ?(若本)」 「2週間くらいですかね」 「そのと~り! 2週間だよ2週間、普通それくらい時間がありゃあ女キャラの一人や二人とフラグくらい立つだろうがよ!? なのに俺たちときたら、こうやって時間を無駄に浪費してるだけじゃねえかよ!!!(若本)」 その音速丸の言い分に流石にサスケも開いた口が塞がらなかった。 サスケは仕事の為に家を開けがちなハラオウン家の家事手伝いに忙しいし他の忍者も無駄飯喰らいを感じて高町家や八神家の家事や家業の手伝いに回っているが、音速丸ときたら毎日エロゲ(しかもクロノの部屋のPCで)やってるかアニメ見てるかしかないのだ。 「いや音速丸さん……やっぱフラグ云々を言うなら何か行動をしてからの話では?」 「ほ~う…何か行動? 例えば何だサスケ?(若本)」 「まず我々の家事に手を貸すとか…」 「大却下ぜよ~! そういうのはおめえらがやってろい!(若本)」 「うわ~堂々とニート宣言ですか? それじゃあ他のクロス作品のキャラでも見習ったらどうですか?」 「ほう~う、サスケにしちゃあ良い事言うじゃねえか。それじゃあ他のクロス作品キャラがどうやってフラグを立ててるか分かるかサスケ?(若本)」 「そうですね~、まずは劇的な出会いとか?」 「俺達の出会いも十分に劇的だったぜ~(若本)」 「いきなりセクハラ攻撃ですからね……それじゃあ、やっぱり恒例のあのイベントですかね…」 アースラ内の訓練室になのは・フェイト・はやての3人が並んでいる。その3人の前には音速丸が腕を組んでパタパタと飛んでいた。 「え~では、そういう訳でこれからおめえらと模擬戦を行ううう!! ぶるあああ!!(若本)」 いきなりハイテンションでぶっ飛んでる音速丸になのは達は恐る恐る疑問を口にした。 「えっと…音速丸さん…どうして突然模擬戦を?」 「どういう訳なのかよく分からないんですが…」 「なんか、相変わらずテンション高いんやな~」 音速丸は厳密な会議の結果(酒飲んでアニメ見ながらサスケ達とくっちゃべった)やはりクロスキャラがフラグを立てるには模擬戦が1番という結論に落ち着いた為にこうしてなのは達を集めたのだった。 「グダグダあふあふ言ってんじゃねええ!!! 俺がやるって言ったらやるんだよロリっ子どもがああああ!!!!(若本)」 「でも私達って結構魔道師ランク高いんですよ?」 強引な俺理論を展開する音速丸になのはが心配そうに聞く、だが音速丸は不敵に笑ってこれに返事を返した。 「ふっ…おめえら~、一つ聞くがこの世で1番強いと思うのはだれだ~?(若本)」 その突然出た音速丸の質問になのは達は困惑しながらもそれぞれに答える。 「孫悟空」 「江田島平八」 「範馬勇次郎」 「くく…実はな~俺は孫悟空と戦って勝ったんだぜ~(若本)」 「「「本当ですか!?」」」 「もちろんさ~(若本)」 3人にそんな事を言う音速丸、その彼に近くで成り行きを見ていたサスケが耳打ちする。 「音速丸さん、子供に嘘言っちゃだめですよ。っていうかこの子達って強いらしいですから止めた方が良いですよ…」 「何言ってんだよサスケ~俺が孫悟空と戦ったってのは本当だぜ~。それに所詮9歳のロリっ子が使う魔法なんて大したことねえよ~(若本)」 「音速丸さ~ん、それじゃあ始めますよ」 「お~う分かったぜなのは~。ほれサスケ下がってろい、このロリっ子どもを今からホヒンホヒンにしてやるからな~(若本)」 音速丸の話を信じた3人の魔法少女は全力全開、手加減抜きで魔法を使った。 「スターライト…」 「プラズマザンバー…」 「ラグナロク…」 眩い光が収束し莫大な魔力が渦を巻き、3人の最大最強の大技が放たれる。 「「「ブレイカー!!!」」」 「げぼちょおおおおおおんんんん!!!!!(若本)」 今日も哀れな珍獣の絶叫が木霊する。 「ま~ったく。えれえ目に会ったぜ、まさかあんな魔法使うなんてよ~。っていうか全然魔法少女的じゃねえぞあれは…(若本)」 音速丸は先の模擬戦で大怪我(?)を負い体中に包帯を巻いた状態になっていたのだ。 音速丸はそうしてハラオウン家のベッドの上で養生しアニメを見ながら愚痴を漏らす、まあ彼にとってはこの方が文句を言われずにアニメを見れるのでありがたい限りだった。 そこにノックが鳴りフェイトの声が届いた。 「あの…音速丸さん…ちょっと良いですか?」 「むううう!! ちょっ、ちょっと待ちなさいよマドモアゼル! 今、股間のエッチピストルを仕舞うからして~(若本)」 「は、はい…」 音速丸はそう言うと見ていた18禁アニメの再生を止めて散らばっていたエロゲーのパッケージを仕舞って、難しそうな本を並べて最低限の見栄を張る準備を整える。 「ささ、お嬢さん。準備が整いましたぞなもし~(若本)」 「それじゃあ…失礼します」 音速丸のいる部屋にフェイトがおずおずと入ってくる、彼女は音速丸の包帯だらけの身体を見て心底すまなそうな顔をする。 「その…すいません。私達のせいで音速丸さんにケガをさせて…」 「いや~、まあ気にすんなってよ~ミス美少女~。俺ってばあの時変身するの時の呪文考えてたらボーっとしちゃってよ~、おめえらは悪くねえって(若本) 「そ、そうなんですか?」 元々は音速丸が言い出した模擬戦なのにケガをさせた責任を感じるあたりフェイトの人柄の良さが伺えた。 「でも私のせいでもありますから……看病させてもらっていいですか?」 「なんですとおおおお!!! まあいいだろう、おめえがどうしてもと言うならば看病させてやろう~(若本)」 こうして音速丸はフェイトにトンデモ看病をさせることになった。 音速丸はさっそくフェイトの膝の上を占拠してセクハラモードに突入する。 「看病と言うものは痛みに震える患者に直接手を触れて痛みを和らげる…ということなのだ!! まずはケガの早くなる呪文キダイスと唱えながら頭をナデナデしろい!!!(若本)」 「分かりました、キダイスキダイスキダイス、こうですか?」 「う~ん、もっと~もっとだ~!!!(若本)」 「キダイスキダイスキダイスキダイス(以下略)」 まあ、つまり“大好き”に聞こえるっていう最高に馬鹿らしいセクハラトラップな訳である。 そして音速丸がそれだけで終わるはずも無く、彼のセクハラ攻撃はまだまだ続く。 「よ~し次はシテルアイと言いながら包帯取替え~」 「シテルアイシテルアイシテルアイ」 「では音速丸様ウフ~ンと言いながらメシ~」 「音速丸様…ウフ~ン」 「それじゃあ、服を脱いで1番セクシーだと思うポーズをしろい!!!!(若本)」 「ふえ? セクシーですか?」 もはや取り繕う事もしなくなった音速丸、突っ込み役がいない為にどこまでもヒートアップしていくセクハラ攻撃であった。 「お~い音速丸。生きてるか? フェイトがいないんだが…」 そこでクロノが見たのはフェイトの膝の上でにやけた顔でよだれを垂らす音速丸の姿だった。 「音速丸……ブレイズキャノンで黒焦げかスナイプショットで蜂の巣のどっちが良い?」 「ちょっ! 待てってクロスケこれには深~い訳が(若本)」 「問答無用」 「ぶるううあああああああああああ!!!!!(若本)」 この珍生物は何度ヒドイ目にあっても懲りたりはしない、今日も海鳴の町に彼の声が木霊する。 続くかも(?) 前へ 目次へ 次へ
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第12話「敗北、そして新たな出会いなの」 「ゾフィー、ヒカリ……!! ついに現れたか、宇宙警備隊め……!!」 異次元空間。 ゾフィーとヒカリの乱入という事態を目にし、ヤプールは歯軋りした。 宇宙警備隊の介入は、全く予想していなかったわけではない。 メビウスが時空管理局側にいる以上、時空管理局がメビウスの世界を見つけ出すかもしれない。 逆に宇宙警備隊側が、メビウスを探してこちらの世界にやってくるかもしれない。 そう、可能性としては考えてはいたが……実際に現れたとあっては、やはり厄介だ。 ヤプールは掌から黒いガスを噴出させ、それを凝視する。 「……まだだ。 仮に、奴等のコアを全て使ったとしても……まだ届かん。 完成さえしてしまえば、宇宙警備隊も時空管理局も……誰が相手であろうと…… 暗黒四天王や、皇帝さえも……!!」 闇の書さえ完成すれば、全ての目的は達成される。 そうなれば、もはや止められる者はいない……だが、まだまだ完成には遠い。 フェイトのリンカーコアを吸収しても、まだ闇の書のページは埋まりきっていなかったのだ。 今の所、ページを大幅に増やす方法が一つだけ、あるにはあるが……それを用いても、まだ届かないだろう。 ヴォルケンリッターやダイナが、地道な蒐集を進めるのを待つか。 答えは否……こちらからも、出来る事をやらなければならない。 ページを増やす手立てが……無い訳ではないからだ。 (尤も、これで奴等が倒れてしまえばそこまで……かなりの賭けにはなるがな。 奴等に、それだけの力があるかどうか……) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「超古代の戦士……それが、ウルトラマンダイナの正体か。」 『うん……ミライさんの様な、光の国のウルトラマンってわけじゃないらしいんだ。』 時空管理局本局。 ユーノは、ウルトラマンダイナについて調べ上げた事に関して、なのは達に報告していた。 分かった事は、ダイナはミライと同じ光の国のウルトラマンではないと言う事。 ダイナは異世界において、超古代の時代に悪と戦い続けてきた光の戦士の一人。 そして、スフィアと呼ばれる知的生命体の火星襲来を機に、現代に目覚めたという事である。 ミライの予想は、見事に的中していたのだ。 「そう言われてみると、確かに納得できるね。 なんかダイナって、ゾフィーやヒカリと違って、色が派手だったしさ。」 「ダイナは、レッド族・シルバー族・ブルー族のどれに当てはまるのか、分からないウルトラマンでしたからね。」 「え……ウルトラマンって、そういう風に色で分けられてるんですか?」 「うん、そうだよ。 だからそれもあって、ダイナが異世界のウルトラマンだって思ったんだけど…… まあ、どれに分類したらいいのかっていう例外みたいなウルトラマンもいるにはいるから、不安だったんだ。」 ミライは、恐らく自分が知る限りは最強のウルトラマンであろう、ウルトラマンキングの事を考えて溜息をついた。 正直な話、あのウルトラマンキングだけは、どれに分類したらいいか未だに悩む。 シルバー族といえばシルバー族なのかもしれないが……カラーリングが、少々独特すぎる。 本人に聞いてみれば分かるのかもしれないが、相手が相手だけに、会える機会は極めて少ないだろう。 兎に角、この事は一旦置いておくことにして、ユーノの報告を聞くのに専念する事にする。 『ダイナのいた世界では、他にもウルトラマンは確認されてる。 ウルトラマンティガ……ダイナと同じ、超古代の戦士が現代に目覚めたウルトラマンなんだ。 一応、他にもイーヴィルティガっていうウルトラマンもいたらしいけど……こっちは悪党だったらしいからね。 怪獣とか侵略者とか、そっちの方に分類されてたんだ。』 「じゃあダイナは、そのティガっていうウルトラマンと、一緒に地球を守り続けていたの?」 『いや、それがそうじゃないんだ。 ティガが現れたのは、ダイナが現れる七年も前なんだけど……ティガはある戦いを切欠に、姿を消したんだ。』 ユーノは画面に、ティガに関する資料を映し出す。 ダイナと似た姿を持つ、もう一人のウルトラマン―――ウルトラマンティガ。 その異世界において、初めて人々の前に現れた、最初のウルトラマンである。 ティガが現れたのは、ダイナが現れるよりも八年も前。 超古代の戦士の遺伝子を受け継ぐ一人の青年―――マドカ=ダイゴが、ティガの力を手にした事が全ての切欠であった。 ―――もっともなのは達は、ダイゴの名前までは分からなかったようだが――― ティガは、数多くの悪と激闘を繰り広げ、人々を守り抜いてきた。 しかし、月日が経つに連れて戦いは熾烈を極めるようになり……ティガも、苦戦を強いられる用になっていった。 そして終には、ティガとは対極をなす『闇』の存在―――最強の敵、邪神ガタノゾーアが復活を遂げた。 ガタノゾーアの力は恐ろしく強大であり……ティガも、その前に敗れ去ってしまったのだ。 だが、それでも人々は希望を捨てなかった。 闇に屈しまいとした人々の希望は、光となってティガを蘇らせたのだ。 希望の光を得たティガ―――グリッターティガは、その圧倒的な力でガタノゾーアを打ち倒した。 そして、戦いが終わった後……ダイゴは、ティガへと変身する力を失ってしまったのである。 「希望が力になって、闇を倒した……」 「最後まで諦めず、不可能を可能にする……それがウルトラマン。 異世界でも、それは変わらないんだね。」 『それからしばらくの間、ティガは人々の前に現れることはなかったんだけど…… 邪神との戦いから二年後に、ティガは再び現れたんだ。』 邪神ガタノゾーアとの戦いから、二年後。 超古代遺跡ルルイエより、闇の力を持つ巨人が復活を果した。 そのリーダー格である戦士カミーラは、かつてティガと恋人同士にあった。 彼女はティガと再び出会う為、ダイゴの前に現れ、ティガへと変身する力を与えたのである。 その後、ダイゴは彼女等を打ち倒す為にとティガへと変身を遂げたのだが……現れたティガは、かつての彼と違った。 その全身は、闇を連想させる漆黒のカラーリングをしていた。 そう……ティガは本来、彼女達と同じ闇の力を持つ戦士だったのだ。 二年前は、正義の心を持つダイゴがその力を手にした事により、光の戦士として覚醒した。 だが今回は、カミーラの力の影響が大きかった為か、闇の戦士―――ティガダークとして目覚めてしまったのである。 そして、その変身は極めて不完全なものであった。 正義の心を持ったまま闇の戦士として覚醒してしまったが為に、本来の力を発揮できないでいたのだ。 しかし、それでもティガは諦めず、彼女等に戦いを挑んだ。 その結果……奇跡は起こった。 ルルイエに眠っていた超古代の光の戦士達が、戦いの最中にティガへと光を分け与えたのだ。 ティガは戦士達の光を得、グリッターティガへと覚醒し……そして、カミーラ達を終に打ち倒したのである。 『そして、この戦いから六年して……終にダイナが現れたんだ。』 「じゃあ、それを最後にティガは消えたんだね。」 『いや、それがこれが最後じゃないんだ。』 「……ふぇ?」 『さっき言ったのと矛盾しちゃうけど……実はティガは、一度だけダイナと共闘してるんだ。』 それは、ティガが最後に現れてから六年後の話。 地球侵略を目論む異星人―――モネラ星人が、地球に襲来してきた時の事である。 ダイナは、モネラ星人の切り札である超巨大植物獣クィーンモネラに、敗れ去ってしまったのだ。 圧倒的な力を持つ巨悪の前に、ウルトラマンが倒されてしまう。 奇しくも状況は、かつてのティガとガタノゾーアとの最終決戦と、同じであったのだ。 そして……この絶望的な状況を救ったのも、かつてと同じもの―――希望の光であった。 希望を捨てず、諦めなかった人々の想いが光となり、そしてその光が……ティガとなったのである。 ティガは己の光を……人々の希望をダイナへと分け与え、ダイナを復活させた。 そして、ティガとダイナはついにクィーンモネラを打ち倒したのである。 「……全く、とんでもない話だね。 信じてさえい続ければ、必ず奇跡は起こるって……でも、そういうのも嫌いじゃないよ。」 『これが、ティガが人々の前に姿を現した最後の戦いだよ。 それからは、ずっとダイナが戦い続けていたんだけど……』 「……ダイナはある戦いを切欠に、姿を消した?」 『うん、その通りだよ。 ダイナは、暗黒惑星グランスフィアとの戦いを最後に……消え去ったんだ。』 地球と一体化を遂げようとした、暗黒惑星グランスフィア。 周囲に巨大なブラックホールを持つ、近づくもの全てを飲み込む巨大な闇。 ダイナは仲間達と力をあわせ、グランスフィアとの決戦に臨んだ。 そして、グランスフィアを消し去る事に見事成功し、地球を救ったのだが…… ダイナは、グランスフィア消失時に発生した巨大なブラックホールに、そのまま飲み込まれてしまったのである。 これが、人々がダイナを見た最後だと記録されている。 「えっと……そのブラックホールが、私達の世界に通じていたってことでいいんだよね?」 『多分そういうことだと思う。 そして、その後は……何らかの切欠でヴォルケンリッター達と出会って、行動を共にしてる。』 「しかし分からないのは、ダイナが何で彼等と一緒にいるかだな。 こうして見てる限り、ダイナはミライさんと同じ……人々を守るために戦ってきた、ウルトラマンなんだろう? なら、どうして闇の書側の味方なんか……」 ダイナの正体が分かったのは良いが、御蔭で尚更謎が深まった。 何故ダイナが闇の書側についたのかが、皆目検討がつかなくなってしまったからだ。 もしも、ダイナが悪党であるのならば話は分かる。 だが……彼は正義の味方として戦い続けた、ウルトラマンなのだ。 ならば何故、闇の書を完成させようとしているのだろうか。 仮に、ヴォルケンリッターに恩義を感じているのだとしても……やはり、考えられない。 「……ザフィーラの奴は、自分達の意思で闇の書の完成を目指してるって言ってた。 主は関係ないって……もしかして、闇の書を完成させなきゃいけない理由があるのかな?」 「けど、闇の書は破壊にしか使えないはずだし……あ、ユーノ君。 その闇の書に関しては、何か分かってるのかな?」 『はい、御蔭で色々と分かりました。 とりあえず、今分かってる事は全部話しますね。』 ユーノは画面に、闇の書に関する資料を映し出した。 ここまで調べてみて、様々な事が分かった。 まず最初に、闇の書というのは正式な名称ではないということ。 闇の書の本来の名前は『夜天の魔道書』ということである。 その本来の目的は、各地の偉大な魔道師の技術を吸収して研究する事。 それらを記録として半永久的に残す為に造られた、主と共に旅する魔道書……それが、夜天の書であったのだ。 そんな夜天の書が破壊の為に力を発揮するようになったのは、ある持ち主がプログラムを改竄したから。 圧倒的な力を欲しさに、全てを捻じ曲げた者がいたからである。 この改竄の結果、旅をする機能・破損したデータを自動修復する機能が暴走してしまった。 転生と無限再生の機能は、これが原因で生じてしまったのだった。 だが闇の書には、これらを遥かに上回る凶悪な機能が、更に搭載されてしまっていた。 それは、主に対する影響の変化にあった。 闇の書は、一定期間蒐集がない場合……主自身の魔力を侵食し始める。 そして完成した後には、破壊の為だけに主の力を無際限に使い続ける。 その為、これまでの主は皆……完成してすぐに、その命を闇の書に吸い取られてしまったのである。 「……ロストロギアの持つ、強大な力を求めた結果か。 どこの世界でも、そんな奴はいるんだな……」 「封印方法や停止方法については、分かった事はあるか?」 『それは今探してる。 でも、完成前の停止は……多分難しい。』 「え……どうして?」 『闇の書が真の主と認識した人物でないと、システムへの管理者権限が使用できない。 つまり、プログラムの停止や改変ができないんだ。 無理に外部からアクセスしようとしたら、主を吸収して転生するシステムも組み込まれてる…… だから、闇の書の永久封印は不可能って言われてるんだ。』 「……ファイナル・クロスシールドも、破られる可能性がありえるんだよね……」 闇の書の封印は、流石のウルトラマンでも厳しいようであった。 かつてヤプールを封印したファイナル・クロスシールドでも、下手をすれば打ち破られる危険性がある。 そしてそれは、破壊に関しても同じ事が言える。 アルカンシェルで跡形もなく吹き飛ばしても再生するというのであれば、自分達の光線はまず通用しない。 例え、一撃で惑星を一つ消滅させるだけの破壊力を持つ最強兵器『ウルトラキー』を使ったとしても、恐らく結果は同じだろう。 しかし……それでも、主を闇の書の完成前に捕まえ、闇の書を破壊するしか手はない。 結果を先送りにするだけではあるが、現状を何とかする事は可能だ。 皆の顔つきが、一層険しくなる。 こんなに危険な魔道書を作り上げたかつての主に対して、少なからず怒りを感じているようである。 するとそんな中、アルフがふと口を開き、疑問に思ったことを訪ねてみた。 「ユーノ、闇の書を改竄したかつての主ってのがどんな奴なのかは、分からないのかい?」 『名前とか出身世界とか、詳しい事までは分からないけど……古い歴史書には、こう書いてあった。 まるで血の様な赤い色をした、悪魔の様な存在だって……』 「悪魔……」 悪魔という単語を聞くと、どうしてもヤプールの事が頭に思い浮かんでしまう。 散々、ミライやゾフィー達といったウルトラマン達が、ヤプールの事を悪魔と呼び続けていたためであるが…… 流石に考えすぎだろうと、皆が苦笑する。 しかし……唯一、ミライだけは引っ掛かりを感じていた。 何故ならば、ヤプールも……赤い色をしているからだ。 (本当に……単なる偶然なんだろうか……?) 単なる偶然として片付けるには、何かが引っかかる。 ヤプールが闇の書を狙うのは、本当に、唯単に強い力の存在を感じ取っただけだからなのだろうか。 それとも……もしかしたら、最初から闇の書の存在を知っていたのではないだろうか。 そう……闇の書の改竄を行ったのは、ヤプールなのではないだろうか。 そんな悪い予感を……ミライは、少なからず感じていたのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「入院?」 「ええ……そうなんです。」 翌日。 はやて達は、彼女が通っている病院へとやってきていた。 今朝、急にはやてが強烈な痛みに襲われ、倒れてしまったのだ。 慌ててアスカ達は、彼女を病院へと運び込んだのだが…… そこで、彼女の担当である石田女医から、入院を勧められたのだ。 どうやら、麻痺が徐々に広がり始めている可能性があるらしい。 事態が事態だけに、流石にアスカ達もそれを承諾せざるをえなかった。 そして今、はやては病室でその事実を伝えられ、少し落ち込んでいる。 「あ、でも……検査とか、念の為だとか言ってたしさ。 そんな心配しなくてもいいって。」 「うん、それはええけど……私が入院したら、皆のごはんは誰が作るん?」 「う……」 「ま、まあそれは……何とかしますから。」 「大丈夫ですよ……多分。」 「はやて、毎日会いに来るからな。 だから……心配、しなくても大丈夫だからな?」 「うん……ヴィータはええ子やな。 せやけど、無理に毎日来んでも大丈夫やからね。 やる事ないし、ヴィータ退屈やろ?」 「う、うん……」 自分の身よりも、周りの者の事を第一に心配する。 そんなはやての優しさを前に、誰もが言葉を発せられないでいた。 彼女が何故倒れたのか……その原因は明らかだ。 闇の書の侵食が、早まってきているのだろう。 何としてでも、彼女を救わなければならない。 より早くの完成を……目指さなければならない。 この優しい主を、絶対に死なせてなるものか。 「あ、でもすずかちゃんからメールとか来るかもやし……心配せぇへんかな……」 「それでしたら、私が連絡しておきますね。」 「まあ、はやてちゃんは普段から頑張ってるんだしさ。 たまには三食昼寝つきの休暇ってことで、ゆっくりするといいよ。」 「そやな……じゃあ、ありがたくそうさせてもらうわ。」 「じゃあ私達は、一度荷物を取りに戻ります。 また後ほど。」 「うん、気をつけてな。」 アスカ達は、はやてが入院中必要になるものを取りに帰るため、病室を後にした。 しかし……それから、しばらくした後だった。 はやては胸を押さえ、苦しみ始めたのだ。 アスカ達に心配をさせまいと、ずっと痛みを堪え続けていたのである。 これまでに経験した事のないレベルの激痛が、体中を駆け巡る。 一体、自分に何が起こっているのか。 はやては、何も分からぬまま、ただ痛みに耐えていた。 (あかん……しっかりせな。 このままじゃ、皆が困るんやもんね……) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん……ちょっといいかな?」 「すずか?」 翌日。 フェイトは無事に意識を取り戻し、なのは達と共に学校にいた。 彼女のリンカーコアの回復には時間が少しばかりかかるが、日常生活には一切支障はない。 その為、これまでと変わらずに学校生活を送れている様だった。 二人は管理局から指示があるまで、現場待機という形になっている。 そして今は、丁度下校時なのだが……仲良し四人組が教室を出てから少しして、すずかがふと口を開いた。 なのは達はその表情を見て、何か深刻な悩み事があるに違いないとすぐに察する。 そして、その予感は見事に的中した。 「実は……はやてちゃんが、入院しちゃったって。」 「え……入院?」 「うん……そうなの。」 すずかの心配事とは、昨日の事―――親友であるはやてが、入院してしまったということだった。 なのは達も、直接の面識がないとはいえ、はやての事はすずかから色々と聞いている。 メールの文面を見る限りでは、然程重い症状というわけではなさそうだが……事が事だけに、流石に心配だった。 彼女は、自分に何か出来ることはないだろうかと思っていたのだ。 そしてその思いは、なのは達三人も同じく感じていた。 ならばと、早速アリサが提案する。 「じゃあさ、皆でお見舞いに行こうよ。」 「うん、私もそれがいいと思う。 今日いきなりは流石にだから、連絡入れて、明日辺りに。」 「うんうん……メールに、励ましの写真とか一緒に乗せてさ。」 「皆……ありがとう。」 「何言ってんの、すずかの友達なんでしょ? 私達にも、紹介してくれるって言ってたじゃないの。」 皆ではやてのお見舞いに行く。 四人の意見は一致し、早速すずかははやてへとメールを打とうとする。 そのまま、四人は学校の外へと出てバス停へと向かう。 そして、十字路に差し掛かったときだった。 「あ、ミライさん。」 「あ、皆。」 四人は、丁度外に出かけていたミライと出会った。 アリサとすずかの二人は、翠屋で始めてあった時以外にも、ミライとは何度か会っていた。 なのは達がハラオウン家の夕食に招かれた時や、なのはの父である士郎が監督を務めるサッカーチームの応援に行った時。 エイミィがなのはの姉の美由希と意気投合して、皆で銭湯に行った時など、色々だ。 ちなみに当たり前だが、賑やかな女性人とは対照的に、ミライは一人男湯で過ごしていた。 ユーノは事情を知らないアリサ達がいる手前一緒には行けなかったし、クロノも都合が悪く仕事ときたからだ。 だが、一人で空しく過ごしていたかというと、全くそんな事は無い。 実は言うと彼は、その銭湯で偶々同じ境遇の男性と出会い、そのまま意気投合してしまっていたのである。 この出会いは後々、色々と波紋を巻き起こすわけなのだが……まあそれは別の話。 ここで、なのは達はミライにある頼みをする事にした。 「ミライさん、よかったら写真撮ってもらってもいいですか?」 「写真……いいけど、どうしたの?」 「実は、友達が入院しちゃって……励ましのメールを送ろうと思ったんですけど。」 「考えてみたら、誰かにとってもらわないと四人全員映れないんですよね。 それで、どうしようかって思ってたんだけど……」 「それで写真かぁ……うん、いいよ。 早速撮ってあげる。」 「ミライさん、ありがとうございます♪」 その後、ここでは流石に通行人の迷惑だからということで、五人は近くの公園へと移動した。 ミライははやての事は知らないが、きっと彼女達の良き友達なのだろうと思っていた。 だから彼は、早く良くなって欲しいと願いを込め、四人の写真を撮る。 しかし、この時はたして誰が思っただろうか。 この写真が、思わぬ波紋を呼ぶことになろうとは…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「あ、すずかちゃんからだ。」 数分後。 八神家では、シャマルが食事の下ごしらえをしている最中であった。 はやてが入院中のため、今は彼女がはやての携帯電話を預かっている。 早速、シャマルはすずかからのメールを確認する。 メールの内容は、明日の放課後に友達と共に、はやての見舞いに行くという事。 はやてにとって、すずかは誰よりの親友である。 彼女から励ましの言葉があれば、きっとはやても喜ぶに違いないだろう。 それに、すずかが友達を連れてきてくれるというのならば、はやてに新しい友達が出来る。 思わずシャマルの顔に、笑みが浮かぶ……が。 この直後、メールに添付されていた一枚の写真を見て……彼女の表情は、凍りついた。 「え……!?」 シャマルは目を見開き、硬直する。 思わず、握っていた菜箸をシンクに落としてしまった。 しかしそれも無理は無い。 その写真に、あの二人―――なのはとフェイトが映っていたのだから。 まさか、すずかが彼女達と友達だなんて、思ってもみなかった。 このままではまずい……そう感じ、すぐさまシャマルは他の四人へと念話を飛ばす。 『シャマルか……どうした?』 「た、大変なの!! テスタロッサちゃんと、なのはちゃんと、すずかちゃんとが……!!」 『落ち着け、シャマル。 一体、テスタロッサ達がどうしたんだ?』 「あの二人が、管理局魔道師が……明日、はやてちゃんに会いに来ちゃうの!!」 『ハァッ!? ちょ、それって……俺達の事、ばれたの!?』 「ううん、そうじゃないんだけど……あの二人、すずかちゃんのお友達だから……!!」 『何だって……?』 あの二人は、すずかの友人だった。 ヴォルケンリッター並びにダイナ達は、その事実に驚き言葉を失う。 何と言う偶然だろうか。 はやてが闇の書の主であるという事までは、どうやらばれてはいないようだが……それでもこれはまずい。 シャマルが焦りを覚えるのも、無理は無い。 「どうしよう、どうしたら……!!」 『落ち着け、シャマル。 幸い、主はやての魔術資質は全て闇の書の中だ。 詳しい検査をされない限り、まずばれはしない。』 「そ、それはそうだけど……」 『つまり、私達と鉢合わせることがなければいいわけだ。』 「うぅ……顔を見られちゃったのは、失敗だったわ。 出撃する時に、変身魔法でも使ってればよかった……」 『今更悔いても仕方ない。 ご友人のお見舞いには、私達は席を外そう。 後は主はやてと、それと石田先生に我等の名前を出さないようにお願いしておこう。』 「はやてちゃん、変に思わないかなぁ……」 『仕方あるまい……頼んだぞ。』 「うん……」 『……ちょっと待った。 確かに、シグナムさんとか皆はやばいけどさ……俺はセーフなんじゃない?』 「……あ。」 アスカの一言を聞き、皆がハッとした。 確かに蒐集の際には、アスカはウルトラマンダイナに変身して出撃している。 自分達と違い、顔も名前も知られていない筈だ。 彼だけは、なのは達と接触してもセーフなのではなかろうか。 誰もがそう思ったが……すぐにこの後、皆があることを思い出す。 『駄目だ、アスカ……お前も顔が割れている可能性がある。』 『え?』 『お前さ、一番最初に変身した時……ほら、あたし助けた時だよ。 あの時、一瞬だけど顔見られてなかったか?』 『……あぁっ!?』 自分でもすっかり忘れていた。 この世界に来て、一番最初にダイナへと変身した時。 あの時、一瞬だけとはいえ姿を見られていた可能性があるのだ。 ばれていない可能性もあるが、それでも顔を見せるにはリスクが高すぎる。 結局のところ、誰もなのは達の前に姿を現す事はできないということだ。 アスカは大きく溜息をつき、己の不運を呪った。 本当に今更ではあるが、この世界に来る前までの様に、隠れてこっそり変身すべきだったか。 いや、それではこうしてはやての為に戦うことも出来なかったし……どちらにせよ、どうしようもない。 『……落ち込んでいても仕方ない。 気を切り替えて、蒐集に戻るか……あ~、くっそ……』 「……兎に角、それじゃあ急がないと……」 早速シャマルは、身支度を整え外出しようとする。 はやて達に、自分達の名前を出さぬよう注意をしなくてはならない。 一体、どう説明すれば納得してくれるだろうか。 病院に着くまでに、いい言い訳を考えなければならない。 これまでにないこの事態に、シャマルは相当の危機感を抱いていた。 (怒っちゃうかな、はやてちゃん……) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「シャマルの奴、大丈夫かな……?」 異世界、大海原。 その上空を飛びながら、ヴィータはシャマルの事を考えていた。 自分達の名前を出さないようにとはいうものの、どうはやて達に説明するのだろうか。 下手な事を言って、彼女達を怒らせたり、不安がらせたりしないだろうか。 どうにも、マイナスな方向へばかり物事を考えてしまう。 「……いけねぇ。 今は、こっちに集中しないといけないのに……」 ヴィータは大きく頭を振り、蒐集活動に集中しようとする。 闇の書さえ完成させてしまえば、後はどうにだってなる。 はやてを一刻も早く回復させるのが、自分達の役目。 そう思おうとするが……ヴィータには、すぐにそれが出来なかった。 昨日から、何かが自分の中で引っかかっていたからだ。 (……何かがおかしいんだ。 こんな筈じゃないって、私の中の記憶が訴えている……でも。 今は、こうするしかないんだ……!! はやてが笑わなくなったり、死んじゃったりしたら……!!) しかし、ヴィータはその引っ掛かりをすぐに否定する。 自分がこうして躊躇ったりしている内に、はやてに何かがあったらどうしようもない。 彼女の命は、後どれだけもつか分からないのだ。 だから、やるしかない……やるしかないのだ。 自分達には、迷っている暇は無い。 「やるよ、アイゼン!!」 『Ja!!』 海中から、巨大な海蛇の様な魔道生物が出現する。 ヴィータはカートリッジをロードし、その脳天へと全力でグラーフアイゼンを叩きつけた。 だが、一撃で倒れてはくれない……どうやら、それなりに実力があるようだ。 ならばそれだけ、リンカーコアから蒐集できる魔力も期待できる。 久々に当たりを引いたと確信し、ヴィータは一気に勝負に出た。 再度カートリッジをロード、グラーフアイゼンの形態を変化させる。 とてつもなく巨大な破壊槌―――ギガントフォームに。 「ぶちぬけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 グラーフアイゼン最強の一撃が、魔道生物の横っ面にぶち込まれた。 流石にこれには耐え切れなかったようであり、魔道生物は悲鳴を上げて崩れ落ちる。 すかさずヴィータは、アイゼンを振り下ろして追撃。 その頭部に、強烈な一撃をぶち込んだのだった。 これで、魔道生物は完全に沈黙。 すぐにヴィータは、リンカーコアを生物から摘出させる。 結果は予想したとおり……これまでの生物に比べて、比較的強い魔力であった。 これなら、それなりにはページを埋められそうだ。 すぐに、蒐集に移ろうとする……が。 この直後……予期せぬ事態が、彼女に襲い掛かった。 ドッバァァァァァァァァンッ!! 「えっ!?」 「ギャオオオオオォォォォォォォォッ!!」 突然、背後から大津波が襲いかかってきたのだ。 ヴィータはとっさに障壁を展開、それに飲み込まれないようにと踏ん張る。 この津波は、自然に発生したものではない。 同時に聞こえてきた鳴き声こそが、何よりの証拠である。 すぐにヴィータは、その声の主であるだろう相手の迎撃に移ろうとする。 しかし、この直後だった。 もう一発、続けて津波が発生したのだ。 それも今度は、正反対……魔道生物のいた方からである。 よりにもよってこのタイミングで、敵は二体現れたのだ。 ヴィータは片手で障壁を維持しながら、もう片方の手でも障壁を展開し、背後の津波に対応する。 なのはの砲撃魔法なんかに比べれば、この程度の相手は何とかしのげるレベルだった。 そして、津波をしのぎきった時……彼女は、信じられない光景を目にした。 「なっ……嘘だろ!?」 「ギャオオォォンッ!!」 魔道生物がいた方に出現した、その大型生物。 まるで刃の様に鋭く尖った尾びれを持つ、紅い体色の二足歩行獣―――レッドギラスが、空を仰いで大きく雄叫びを上げた。 あろうことかこの怪獣は、今ヴィータの目の前で……彼女が倒した魔道生物を、食らったのだ。 それも……摘出したリンカーコアごとである。 これにはヴィータも、怒りを感じずにはいられない。 何としてでもぶち倒し、リンカーコアを引きずり出す。 すぐさま、彼女はレッドギラスに襲いかかろうとする……が。 それよりも早く、彼女の背後にいたもう一匹の怪獣が動いた。 レッドギラスと全く同じ、唯一の違いはその体色が黒色である怪獣―――ブラックギラス。 ブラックギラスはヴィータへと、全力で拳を振り下ろしてきた。 「くっ!!」 ギリギリのところで気付き、ヴィータはこれを回避した。 どうやら、二体纏めて相手にする必要があるらしい。 ならば、このままギガントフォームの一撃をぶち込んで、打ち倒してくれる。 ヴィータは大きく振り被り、そして二匹へと振り下ろそうとする。 しかし、それよりも僅かに早く……レッドギラスとブラックギラスが動いた。 二匹はまるでスクラムを組むように、互いの肩をがっちりと掴んだのだ。 そして……その体勢のまま、急速で回転し始めた。 これこそが、かつてウルトラセブンとウルトラマンレオを苦しめた、双子怪獣必殺の攻撃―――ギラススピンである。 グラーフアイゼンとギラススピンが、真っ向からぶつかり合った。 鉄槌の騎士必殺の一撃と、双子怪獣必殺の一撃。 相手にうち勝ったのは…… 「ぐっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」 グラーフアイゼンが弾かれ、ヴィータが大きく吹っ飛ばされる。 うち勝ったのは、ギラススピンの方であった。 ヴィータは当然知らなかっただろうが、ギラススピンはかつて、ウルトラセブンのアイスラッガーにもうち勝った程の攻撃。 彼女の最大の一撃をもってしても、うち破るには届かなかったのだ。 勝ち誇るかのように、双子怪獣は唸りを上げる。 そしてヴィータは、海面へと叩きつけられ……海中へと沈んでいった。 (嘘だろ……? こんなんで、終わりなんて……) まさかこんな所で、こんな敗北をするなんて、思ってもみなかった。 絶対にはやてを助け出そうと、そう誓ったばかりだというのに……何という様だろうか。 悔しくて仕方が無い。 こんな所で、終わりたくなんか無い。 ヴィータは、徐々に薄れ行く意識の中……大切な仲間と、そして主の事を思った。 (シグナム、シャマル、ザフィーラ、アスカ……はやて……はやてぇ!!) 「……はやてぇっ!!」 ヴィータが大声を上げ、起き上がる。 大きく肩で息をし、周囲を見回す。 するとここで彼女は、風景がそれまでとは全く変わっていることに気がついた。 大海原とは一転、緑色の木々が生い茂っている。 目の前では焚き火が燃えており、海水で冷えた体を温めてくれる。 もしかして、誰かが自分を助けてくれたのではないだろうか。 そう思ったヴィータは、他に誰かいないのかと、周囲を見渡してみる。 すると……少しばかり離れた位置から、何者かが近寄ってきた。 馬を連れた、カウボーイハットを被っている中年の男性。 そのわきに抱えられている薪を見て、助けてくれたのはこの人に違いないとヴィータは確信する。 「お、気がついたか……大丈夫そうだね。」 「はい……えっと、助けてくれてありがとうございます。 ……助けてくれたんですよね?」 「ああ、そうだ。 浜辺に流れ着いていたところを見つけてね……本当、驚かされたよ。 ……一体、何があったのかな?」 「……あたしは……」 先程の出来事を思い出し、ヴィータは唇をかみ締める。 突然現れた、謎の生物二匹に負けてしまった。 それも……グラーフアイゼンの最強形態であるギガントフォームが、真っ向勝負で破れたのだ。 鉄槌の騎士と鉄の伯爵にとって、これ以上ない屈辱だった。 そんなヴィータの表情を見て、男は少しばかり暗い表情をする。 どうやら、よっぽどのことがあったに違いない……これは、聞くのをよした方がいいだろうか。 そう思って、話を中断しようとするが……ヴィータが話をし始め、それを遮った。 「……あたしは、負けたんだ。 あの、黒と赤の二匹の怪獣に……アイゼンが……!!」 「……!!」 ヴィータの言葉を聞き、男は表情を変えた。 赤と黒の二匹の怪獣……場所は海。 彼には、思い当たる節があったのだ。 だが……それ以上に問題が、最後の一言―――アイゼン。 まさかと思い、男は確認をとろうとした。 「……よかったら、名前を教えてもらえないかな?」 「あ……ヴィータです。」 「ヴィータか……」 男はその名前を聞き、軽く一息をついた。 やはり、予想したとおりだった……偶然とは恐ろしいものである。 まさかこんな所で、出会う羽目になろうとは。 しばし、男は言葉を失っていた。 そんな彼をヴィータは、不思議そうな顔をして見つめてくる。 流石にこのままではまずいと感じて、男はすぐに口を開いた。 そして……己の名を、彼女へと告げる。 「……俺はダン。 モロボシ=ダンだ。」 モロボシ=ダン。 かつて、地球防衛に当たった一人の戦士。 ウルトラ兄弟の一人であり、そしてウルトラマンレオの師―――ウルトラセブンその人である。 戻る 目次へ 次へ
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名前 GOD 分類 神格獣類 初出 60話 捕獲レベル 10000 生息地 始まりの大陸 概要 GODの正体 GODの調理 GODを狙う者たち 関連項目 概要 アカシアのフルコースのメインディッシュに選ばれている、全ての食材の頂点に位置する食材。 食べるとグルメ細胞の悪魔の「脳」が復活する。 アカシアが唯一晩年まで追い求めて最後に発見した食材であり、あらゆる人間や食材を虜にしてしまうため、 手に入れれば世界中を支配し、コントロールすることさえ可能とされる。 GODの正体 その正体は無数のおたまじゃくしが融合した巨大カエル。 黄金に輝く体を持ち、腹部には地球のような模様がある。 過去現れた時はただの大きなおたまじゃくしだったが、最後のグルメ日食に際してカエルの姿に成長した。 全ての食材の王であると同時に捕食の王。 数百年に一度の目覚めとと地球上の生物を大量に食らうため、すべての生命はセンターから生まれGODに還るとまで言われる。 月を一口で食らう、舌を一瞬で地球一周の長さまで伸ばしてその軌道上にあったものを全て飲み込むなど怪物的な食欲を持ち、近づくだけで命を吸われてしまう。 GODの調理 料理人の命さえ吸い取ってしまうほど強力な食材のため、調理には多くのエネルギーが必要となる。 そのため最果ての厨房やブルーグリルでは大量の人間の命を肥料にして調理を行っており、ブルーニトロは効率よく人間を集めるために四獣を作った。 唯一フローゼだけは人々を犠牲にせずに調理を成し遂げるも、彼女自身も調理による体力の消耗がきっかけで亡くなっている。 GODの細胞にはこれまでの食の記憶が刻まれており、それらの細胞が持つ食の記憶を紐解くことこそが真の調理法。 途方もない調理だが正しいルートはただ一つ。食材の声に従って旨味の華やく道を辿っていく。 GODを狙う者たち 100年以上続いていたグルメ戦争を終わらせた食材。 それがきっかけで「食」を中心とするグルメ時代が幕を開けたが、分け合う心を持たない者の手に渡ることを恐れたアカシアによって封印される。 数百年に一度起こるグルメ日食の見える日に活動を始め、トリコをはじめとする多くの美食屋が捕獲を狙っている。 しかし、美食會のボス三虎はこの食材を独占して世界中の食材を牛耳ろうと企んでおり、この食材をめぐった戦争が危惧されている。 グルメ界編では、GODを巡って地球規模の最終決戦が勃発。 その最中、小松、大竹、仲梅の手で調理され、トリコのフルコースのメインに決定された。 最終回から数年後にはIGOと再生屋協会が養殖に成功している。 関連項目 猛獣・食材図鑑(原作) アカシア アカシアのフルコースセンター ペア アナザ ニュース エア アース アトム フローゼ グルメインフレーション